「書けた」と「書ける」のあいだ

 英作文やレポートを書き終えて、「やっと書けた」とほっとした経験はないでしょうか。提出できればまずは一安心ですが、その経験を通して自分には何が身に付いたのか、少し立ち止まって考えてみる価値があります。今回は、第二言語ライティング論と教育評価論の視点から、「書けた」という達成を、これからの「書ける」力につなげる工夫について書いてみます。

 ここでいう「書けた」は、目の前の課題で文章を完成させたという成果です。一方、「書ける」には、その一回にとどまらず、別の課題でも目的に合った文章をまとめられるという意味が含まれます。助言を受けて文章を直せたことと、そこで学んだことを次にも使えることは、必ずしも同じではありません。ライティング研究でも、その場での修正だけでなく、次の執筆に向けた変化や、書き手が何を学んだかにも目を向けることが重要視されています。

 例えば、「具体例を加えるとよい」というコメントをもらったとします。そこで言われた通りに一文を加えて終わりにせず、「なぜ具体例が必要だったのか」、「この例は本当に主張を支えているか」と考えてみてください。教育評価の研究では、フィードバックを単なる「従うべき指示」ではなく、「学習者自身が助言など理解し、文章や学び方の改善に生かすプロセス」として捉える考え方があります。コメントを思考の手がかりにし、判断に迷ったときは「どこが伝わりにくかったか」と先生や友人に尋ねてみるのは効果的です。

 この視点は、授業や課題のルールに沿って生成AIを利用する際にも生かせます。AIが提案した文章が読みやすいと感じたら、そのまま採用する前に自分の文章と見比べてみてください。自分の伝えたいことがより明確になっているでしょうか。

 「書けた」は大切な達成です。その過程で行った数多くの工夫の中から、「次回も使ってみたいものを」一つ選んでみてください。そして次の執筆で試し、うまくいかなければ少し変えてみる。一つひとつの文章を完成させる経験が、自身の「書ける」を少しずつ支えていってくれるはずです。

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