点数を超えて:評価を自身の学びの力へ
- 講師
- 久保田 恵佑
- くぼた けいすけ
- 言語テスティング、英語教育学
教員には「評価」という責任ある役割があります。また、それは学習者にとっても避けられないものです。点数や合否、成績といったものが連想されることが多いかもしれません。もちろん、学習者が何を理解し、何ができるようになったのかを測定・数値化することは重要で、学習結果の証明になります。一方で、評価には学習を促すという大切な役割もあります。今回は、評価が持つそうした側面についてご紹介します。
評価には「形成的評価(Formative Assessment)」という言葉があります。簡単に言うと、「学習プロセスにおいて、何をどの程度理解しているかを確認し、指導方法や学習方法を工夫しながら、次の学びに活かすための評価」です。学習者にとっては、テストや課題を通じて、何ができていて、何がまだ不十分なのかを確認しながら、自身の学びを調整していくことに繋がっていきます。
この形成的評価は、授業内での小テスト、Q&A、ミニットペーパー、教員からのフィードバック、ピアレビュー活動、リフレクション活動など、様々な方法で実施されているでしょう。これらの活動や評価は、成績には直結しないケースもあったり、「学びに直接結びついていない」と感じて、つい何気なく済ませてしまうかもしれませんが、「自分がどこにいるか」、「次に何をすればよいか」など、学習のヒントが得られたり、自身の学び方を見直したりする大切な機会になります。
一般的に、評価を受けてその結果に注意が向くのは、最終的な成績開示などハイステークス(成績や進路に大きく影響する)な状況で、「高い得点(良い成績)で良かった」、「あまり良くなかったけど、今振り返っても仕方がない」というように、点数や成績に一喜一憂して終わってしまい、自分の学び方や理解の過程を振り返る機会が少なくなることもあるかもしれません。自身の努力の結果に意識が向くのは当然で、そのことは全く問題ありません。今回強調したいのは、「形成的評価」という観点から、評価を次の学びへの一歩にする、と前向きに捉えることもできるのではないか、ということです。評価が苦手、不安という方もいるかもしれませんが、まず、授業中のフィードバックやコメントなどを、自分の学習を見直す材料として捉えてみてください。評価は点数・成績だけでなく、皆さんの学びを深める大切なツールでもあります。
評価結果を実際の指導改善や学習行動に結びつけていくかには、さらなる議論が必要になりますが、まずは教える側も学ぶ側も「評価の力」をともに理解し合える教室づくりを目指していきたいと思っています。