福島県立医科大学 研究成果情報

2022年度大久保利晃産業保健研究奨励賞(令和5年3月受賞)(2023-04-26)

The Systematic Workplace-Improvement Needs Generation (SWING): Verifying a Worker-Centred Tool for Identifying Necessary Workplace Improvements in a Nursing Home in Japan

項目自己生成式職場改善ニーズ調査法(SWING):日本の介護施設における開発と検証

日高 友郎 (ひだか・ともお)
医学部 衛生学・予防医学講座 講師
        
研究グループ
日高友郎、佐藤勢、遠藤翔太、春日秀朗、増石有佑、各務竹康、福島哲仁

今回の受賞について

公益信託 産業保健研究奨励基金 2022年度大久保利晃産業保健研究奨励賞


 公益信託産業保健研究奨励基金は、近年の AI や情報通信技術の活用、働き方改革などにより急速に多様化する産業構造、労働環境に対応し、今後の企業活動発展に資するためには、益々効果的な産業保健活動が不可欠になるとの認識に基づき、産業保健分野において独創的な活躍をしている者、あるいは今後活躍が期待される者に研究奨励金を贈り、若手産業保健専門家の育成に資することを目的として設定されました。

賞について


 同賞はわが国の産業保健分野の先駆者である大久保利晃氏の氏名を顕彰したものです。産業保健分野における優れた活躍により、産業保健活動の向上への寄与が大きいと認められる、もしくは今後産業保健活動への寄与が期待される若手産業保健実践家または研究者が対象となります。

 日高友郎ら(衛生学・予防医学講座)の研究グループは、労働者の目線に立った職場環境改善ニーズを抽出するための方法を開発した成果を認められ、受賞に至りました。

概要

 職場改善ニーズを労働者視点から抽出しその改善に努めることは、国際労働機関の提唱するDecent Work(働きがいのある人間らしい仕事)の実現に寄与します。しかし、先行研究において提唱されてきた尺度・指標は、様々な職場に広く適用できる一般的な項目を用いているため、「個々の職場や労働者の固有の問題を捉えることができない」、「尺度項目に対する当てはまりの程度と主観的な重みづけとを区別していないため、労働者がその事柄をどの程度重要視しているかを測定できない」、という方法論的な限界が存在していました。

 受賞論文はこれらの弱点を克服した新たな測定手法である「体系的職場改善ニーズ生成法」(Systematic Workplace-Improvement Needs Generation; SWING)を開発・機能検証したものです。SWINGは労働者自身が「働きやすいと感じられる職場の条件」を挙げるとともに、その充足度・重みを評定します。この手続きにより労働者の実感に基づきながら、当該事業所の固有の問題を的確に抽出することができます。

 SWINGは、個々の労働者の経験や思い入れのこもった言葉を活用する一方で、充足度・重みに基づいた数量化も行います。これにより様々な業種・業態の職場への応用も可能な、かつ実用性を備えた方法論として確立されました。働き方改革や職場ダイバーシティ推進など、労働環境改善への要請が強まる中、一つ一つの職場の固有性を捉え、産業保健活動を促進することができる点で社会的意義の大きな研究です。

※SWINGの論文は以下よりご覧いただけます。https://doi.org/10.3390/ijerph19031671


連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部 衛生学・予防医学講座

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FAX:同上

講座ホームページ:https://www.fmu.ac.jp/home/hygiene/index.html/

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