福島県立医科大学 研究成果情報

2022年度日本居住福祉学会学術賞(論文部門)(令和4年9月受賞)(2022-11-08)

Discovery and Revitalization of “Feeling of Hometown” from a Disaster Site Inhabitant's Continuous Engagement in Reconstruction Work: Ethnographic Interviews with a Radiation Decontamination Worker Over 5 Years Following the Fukushima Nuclear Power Plant Accident

被災地住民の復興作業への継続的関与による「ふるさと感」の発見と再活性化-除染作業員への福島原発事故後の5年間にわたるエスノグラフィック・インタビュー

日高 友郎 (ひだか・ともお)
医学部 衛生学・予防医学講座 講師
        
研究グループ
日高友郎・春日秀朗・各務竹康・福島哲仁

今回の受賞について

日本居住福祉学会


 日本居住福祉学会は、「居住は基本的人権である」との発想に基づき、住まいに関連する生活・福祉・健康・文化・社会環境の公共的保護とその支援を目的とした調査研究ならびに政策提言を行う全国的な学術団体です。災害被災による居住喪失をはじめとした、社会における居住をめぐる様々な問題の実態把握を行い、居住の現実から「住むこと」の意義を理解することを目指しています。社会福祉学のみならず衛生学・公衆衛生学、建築学、社会学、心理学、法学など関連する多様な専門家が参加しています。

 

賞について


 日本居住福祉学会学術賞(論文部門)は居住福祉研究の一層の発展を図るため、本学会員のうちで顕著な研究業績をあげた者を顕彰し、研究奨励を行うことを目的としています。論文の掲載誌は問わず、居住福祉研究としての意義を備えた研究が評価対象となります。本年の受賞者は日高友郎ら(衛生学・予防医学講座)の研究グループのみであり、「住み続ける環境を問う貴重な研究である」との観点から高い評価を得て、受賞に至りました。

 

受賞概要


 東日本大震災ならびに福島第一原子力発電所事故は、今もなお多くの人々の居住に危機をもたらしていますが、その一方で被災地住民みずからが故郷の復興に主体的に携わり、地域の将来に貢献するという新たな動きも出ています。受賞論文はこのような住民への長期のインタビュー記録をまとめ、①故郷の「物理的な復元」ではなく「ふるさと感(故郷らしさの感覚)の再活性化」こそが、被災住民が喪失感を克服する上で重要であること、②自らの手で復興に携わることが「ふるさと感の再活性化」に寄与していること、を示しました。

 本研究の成果は、これまでの災害復興において曖昧なまま多用されてきた「心の復興」の内実に迫るものであり、「居住の復興は住まう人々の主体的関わりがあって初めて達成される」という福島ならびに日本の将来に向けた示唆をもたらしました。被災経験の多様性と、その居住福祉的な意味を記録する「災害アーカイブ」としての価値も備えた、社会的意義の大きな研究です。


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