福島県立医科大学 研究成果情報

国際医学誌「Scientific Report」掲載(2025年2月)(2025-04-03)

Changes in long-term life expectancy and years of life lost following the Great East Japan Earthquake in Fukushima Prefecture

東日本大震災後の福島県における、長期的な平均寿命と失われた寿命の変化

小坂 真琴 (こさか・まこと)
放射線健康管理学講座 大学院生
        
研究グループ
小坂真琴、齋藤宏章、村上道夫、小野恭子、池田有花、尾崎章彦、坪倉正治

概要

論文掲載雑誌:「Scientific Report」(2025年2月14日)


  • 本研究では、2006年から2018年までの、住民基本台帳に基づく人口のデータと死亡小票のデータから、期間中に亡くなった方の死因・年齢・性別のデータを抽出し、震災前(2006-2010年)、震災後前期(2012-2015年)、震災後後期(2016年-2018年)それぞれにおける性別・年代別の平均余命と各疾患による損失余命を算出し比較しました。
  • 男女ともに、福島県全体で平均余命は震災前に比べて延伸していることが明らかになりました。4大疾患の中ではがんの損失余命が最も大きく、心疾患、脳血管疾患、肺炎がそれに続きました。
  • 避難指示区域を含む地区では、脳血管疾患(1.30年対1.08年)および心疾患(1.88年対1.73年)による損失余命が避難指示区域を含まない地域に比べて震災前に高かったですが、震災後にいずれも減少しました。全体として避難指示区域を含む地域と含まない地域の平均余命や損失余命の差は縮小していました。
  • 避難指示区域を含む地区では、男性において2012−2015年の期間で震災前と比較してがんの損失余命が増加しました。この結果の原因として、先行研究の結果からはがんの予防・治療に部分的に遅れが生じたことや、他の疾患による損失余命が減少したことに伴って相対的にがんの損失余命が増加したことが考えられます。
  • 男性の平均余命の変化に影響を与えた地域特性の因子は、人口密度、医療従事者数、避難指示区域の有無でした。女性の平均余命の変化に有意に影響を与えた地域特性の因子は、1人あたりの所得でした。
  • 震災地域では、長期間の避難等によって住民の健康が影響を受けていることが指摘されていますが、長期的には医療アクセスの改善や健康対策の強化によって、健康状態が向上し、医療・健康格差が縮小したことが示唆されました。特に、震災前に健康指標が他地域と比較して低かった避難地域では、支援の強化により健康指標の改善がより顕著に表れたと考えられます。
  • 本研究の結果は、震災後の医療復興や健康政策が一定の効果をもたらし、健康格差の縮小につながった可能性を示唆しています。今後も継続的に健康対策を推進することが重要です。(小坂 真琴)

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