医学部

 

放射線健康管理学講座

Department of Radiation Health Management

 

 

 教室紹介

放射線健康管理学講座は2011年10月に新設された新しい講座です。2011年3月11日に発生した東日本大震災とその後の東京電力福島第一原発の事故を受け、福島県立医科大学の復興ビジョンの一環として新設されました。当講座は、放射線の健康影響に関する臨床医学(放射線被ばく医療学、放射線健康リスク管理学)を担う講座で、初代教授として長崎大学病院から大津留晶教授が就任しました。長崎・広島の原爆被爆者、チェルノブイリ原発事故後の周辺住民等の疫学調査の結果等から得られた科学的知見をもとに、福島における低線量被ばくの健康影響やリスク管理について、県民の長期にわたる心身両面の健康に役立つ新たな知見を蓄積することが使命と考えています.

 

 スタッフ

主  任  教  授  坪倉 正治
助    教    アミール 偉      博士研究員  瀧田 盛仁
助    手    伊東 尚美       博士研究員  山本 佳奈
助    手    山本 知佳         博士研究員  齋藤 宏章
講座等研究員    趙  天辰             博士研究員    澤野 豊明

 

 研究活動

レベル7の原発事故後、多くの災害医療支援活動により、緊急被ばく医療の体制が構築されました。福島第一原発では今なお、多くの作業員などが被ばくのリスクを抱えており、今後も緊急被ばく医療体制の充実が必須です。緊急被ばく医療に関わる科学的な研究に加えて、人的、技術的ネットワークの構築と人材育成を、救命救急センターや放射線科とともに、さらには県や国などの行政とも協力して行います(福島医大病院 放射線災害医療センター)。
環境中の放射性物質による低線量被ばくが長期に続く福島においては、長期間の健康フォローアップが必要であり、そのため県民健康調査事業が開始されています。本調査への人的支援、学術的アドバイスを行うとともに、低線量被ばくの健康障害に関する疫学調査を行い、多くの環境因子、遺伝子などの内在因子との関連も明らかにする必要があると考えています。具体的には初期から長期にわたる外部被ばくと内部被ばく線量評価を、学術的評価に耐えられるように行うことと、健康影響を科学的に評価できるようにするため、甲状腺検診、こころの健康と生活習慣病調査、一般健診調査、妊産婦調査を支援しています。そのために国際機関や海外の研究者とも協力・連携して、これらの調査が県民の皆様に真に役立つような、科学的妥当性をもったものになるよう努力しています。放射線健康リスクをご心配されている方々に対するコールセンターを介した電話相談、放射線健康相談外来における診療、検診も行っています。将来的には健康リスク影響の評価が、個人個人の疾患の予防や早期発見につながる研究をめざしています。
放射線による健康リスクについての考え方を、住民の方々及び医療従事者と共有するための、リスクコミュニケーションにも積極的に関わっています。今回の大震災と原子力災害からの復興に向けては、多種多様な考えの方々ができるだけ共通の認識で、地域ごとの特性を生かしながら、少しずつ前進してゆくことが必要だと感じています。教室の医師らも、これまで経験していた臨床医学の世界とは異なる世界ではありますが、このような社会医学活動に現在積極的に取り組んでいます。

 

 教育活動

原発事故前には、日本の医学教育の中では、緊急被ばく医療も低線量健康リスクを含んだ被ばく医療も、それらを学ぶ機会は皆無に等しいものでした。医療人育成センターとも協力し、当講座ならびに放射線災害医療センターと共同で、放射線の基礎、緊急被ばく医療、被ばくによる健康障害、被ばくリスクコミュニケーションなどを、1年生から6年生まで、講義やBSL実習を通じて医学部生・看護学部生に身につけてもらう新しい教育体制を構築しているところです。もちろん被ばく医療の教育は、他の医学教育と独立しているわけではなく、災害医療・放射線医学・物理学・臨床実習・社会医学・腫瘍医学・内分泌医学などの他の分野とも協力しています。医師や看護師なったときに、被ばく医療の教育内容の本質的なものを身につければ、他の分野でも応用できるものをめざしています。福島医科大学は、被ばく医療学の世界の中心として、福島県のみならず、日本や世界に貢献してゆくという使命がこれからますます大きくなってくると思います。卒後教育においても各種セミナーや研修として学ぶ機会を設けています。県外・海外からの研修生の受け入れ態勢も、充実させるよう努めているところです。

 

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 主な活動紹介

①第1回福島WBC学術会議(2012年1月25日、福島医大第2臨床講義室、1月26日、同講堂)
 ホールボディカウンター(whole body counter:WBC)は、福島原発事故前から、国内の二次・三次被ばく医療機関にそれぞれ配備されていました。福島医大もWBC1台を10年前から所有しており、継続してきたメンテナンスが功を奏して、事故後早期の汚染傷病者受け入れにその力を発揮しました。しかし、3月15日の放射性物質飛来以後、バックグラウンドの上昇に伴い、本来の性能が損なわれた状態が継続しています。事故後、県の主導により、2011年6月から放射線医学総合研究所、日本原子力研究開発機構による県外での先行調査が開始され、9月~10月にかけて、自治体や一部病院・検査機関への導入が本格化してきました。その中でまず明らかになってきたのは、機器使用の標準化や精度管理の態勢が出来ていないこと、簡単には校正を受けられないこと、一部メーカーの測定値の信頼性が乏しいこと、ややバックグラウンドの高い状況下でWBCを使うことに制限が課せられること、などでした。これらの問題を福島県内のWBC運用実施者の間で共有すべく行われたのが、「第1回WBC学術会議」です。WBCの原理や抱える問題について、また先行調査の取り組みやその結果、さらに早期から多くの検査を受け入れている施設からの発表などをいただきました。今後、福島県内で多数運用されるWBCをどう使うべきか、現場主導で考える場とするべく、発展させていきたいと考えております。

②福島県緊急被ばく医療セミナー(2012年3月11日、福島医大8号館・緊急被ばく医療棟、文部科学省委託事業・原子力安全研究協会主催)
 原子力発電所内で傷病者が発生した場合には、その搬送や診療において、放射線情報収集、放射線防護、汚染拡大防止など、幾つかの特別な準備と対応を要します。セミナーでは原子力事業者、消防、警察、自衛隊、自治体、医師、看護師、技師など他職種が一同に会して有事の対応を学び、実際のシナリオに沿ってシミュレーションします。平成24年度は、福島県や外部専門機関と協力しながら同様のセミナーを県内各地で開催すべく計画しています。将来的には県内の全ての関係機関の皆様に一度はご経験いただきたいと考えております。

③白熱教室 in フクシマ~世界の放射線専門家との直接対話~(2012年4月23日、福島医大講堂)
 米国国立がん研究所 アンドレ・ブーヴィル先生(米国)、ストーニーブルック州立大教授 エヴェリン・J・ブロメット(米国)、国際放射線防護委員会事務局長 クリストファー・H・クレメント先生(カナダ)、国際放射線防護委員会 副委員長 アベル・ゴンザレス先生(アルゼンチン)、ニューメキシコ大医学部放射線科学名誉教授 フレッド・A・メトラー(米国)らを迎え、学生5名の代表と、学生・職員250名のダイアログ・セミナーを開催しました。学生が世界の英知と対等に話せたことはとても大きな経験になったのではないかと思います。

④第2回福島WBC学術会議(2012年4月23日、福島医大講堂)
第1回に引き続いて、米国国立がん研究所 アンドレ・ブーヴィル先生(米国)、ストーニーブルック州立大教授 エヴェリン・J・ブロメット(米国)、国際放射線防護委員会事務局長 クリストファー・H・クレメント先生(カナダ)、ニューメキシコ大医学部放射線科学名誉教授 フレッド・A・メトラー(米国)らを迎え、第1回から約3ヶ月が経過した福島県におけるWBC検査の現状を把握し、さらに多機関から公表されたWBC検査の結果を元に「どのように検査結果を伝えていくのか」をテーマに、第2回WBC学術会議を開催しました。中で明らかになったことは、第一に、「福島の現状はチェルノブイリとはまったく異なり、内部被ばくが極めて低いレベルに抑えられている」ということ、第二に、「どのような方に、なんのために検査を行っていくのか」を明確にしなければいけない、ということ、第三に、「(第1回にも話題となった)WBC検査の手順やデータ処理の標準化が急務である」こと、でした。やはり現場レベルでの情報交換と検査手順の統一化は急ぐべきであり、その整備が、引いては得られた結果に対する信頼性を向上するもの、と認識しております。さらにこの会を継続し、福島におけるWBC検査が、県民の皆さんにとって放射線防護のための大きなツールとしてお役に立てるよう、多くのWBC運用者、助力者とともに尽力していきたい、と考えております。

⑤県民健康調査における甲状腺検診
県民健康調査の詳細調査の一つとして、福島県の子供たちの健康を長期間見守るため、2011年10月から甲状腺超音波検診が実施されています。検査の円滑な実施のための体制作りに参加するとともに、実際に検査を担当しています。対象者が非常に多く、今後長期間にわたって必要な検査であるため、よりよい検査の体制作りと精度の高い検査を維持することが重要であり、今後も甲状腺検診に深くかかわっていく予定です。

⑥放射線健康相談外来検診
消防・警察・自衛隊など原子力災害において公的に危険業務に関与された方々の心・体・放射線影響について検査とカウンセリングを長期的スパンで行っております。平成23年度末までに、のべ500人以上の健康相談に対応しております。

⑦業績・社会活動など

 

 

  英文論文

 

     令和4(2022)年度 令和3(2021)年度 令和2(2020)年度

 

  研究報告書

    著書(邦文)

    研究発表

    特別講演

    その他

 

 原子力災害医療に対するご支援いただいた皆様へ

昨年2011年3月11日からの東日本大震災と原子力災害医療に際しましては、日本全国そして海外から多くの皆様より、多大な身に余るご支援と温かな励ましとをいただき、こころより感謝申し上げます。無我夢中で傷病者の治療にあたった日から、長期の県民の健康を見守るため検診や医学教育・リスクコミュニケーションが中心の日々へと日常的には変化は見られますが、まだまだ放射性物質による環境の汚染や、低線量被ばく、原発事故の収束に向けての戦いは終結しておりません。今後も福島県民の放射線健康リスク管理と被ばく医療の構築、災害復興に向け力を尽くして参ります。ご支援・ご協力を頂いた皆様のご健勝・ご活躍お祈りいたしますとともに、あらためてご厚情に感謝を申し上げます。今後とも、引き続きご指導を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

 

 関連リンク

 

 

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