福島県立医科大学 研究成果情報

英国科学誌「Scientific Reports」掲載(令和6年11月22日)(2024-12-10)

Enhancing healthcare planning using population data generated from mobile phone networks in Futaba County after the Great East Japan Earthquake

東日本大震災後の双葉郡における携帯電話ネットワークを活用して推計した人口データを用いた医療計画の強化

樋口 朝霞 (ひぐち・あさか)
放射線健康管理学講座 博士課程
        
研究グループ
樋口朝霞、吉村弘記、齋藤宏章、阿部暁樹、村上道夫、趙天辰、 アミール偉、伊東尚美、山本知佳、野中沙織、澤野豊明、嶋田裕記、尾崎章彦、及川友好、 坪倉正治

概要

論文掲載雑誌:「Scientific Reports」(November 22, 2024)


  • 東日本大震災後の被災地では、医療資源の適切な配分が極めて重要でした。しかし、大規模な避難による人口変動の影響で、従来の住民票データを用いた正確な地域人口の把握は難しく、正確な医療需要の推計を困難としていました。
  • 本研究では、携帯電話ネットワークを活用して推計した人口データを用いることで、避難指示が部分的に解除された福島県双葉郡8町村における時間的および空間的な人口変動を2019年から2020年にかけて詳細に分析しました。また、双葉郡消防本部が保有する震災後の救急搬送データを用いて、推計した人口に基づいた救急搬送率を計算し、救急搬送率算出のための推計人口データの有用性を評価しました。
  • 解析の結果、地域ごとに昼夜間人口比に顕著な差があることが明らかとなりました。大熊町および双葉町では昼間人口が夜間人口を大きく上回り、昼夜間人口比の中央値は平日・休日ともに3以上でした。これは東京都中央区(9倍)に匹敵する値でした。また、推計人口を用いて算出された性年齢調整救急搬送率は、国勢調査データに基づいて算出された救急搬送率と比較して、全国平均に近く、より実際の搬送率を反映していると考えられました。
  • 本研究は、震災後の復興期における地域社会の変化に対応し、医療資源を効率的に配分するために、携帯電話ネットワークを活用して作成する動的な人口データを考慮することの重要性を示しています。このような人口データを活用し、変動する人口構造に応じた医療需要の把握と医療計画の強化を行うことで、地域の復興に役立てる可能性があります。(樋口 朝霞)

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