- 菅谷 竜朗 (すがや・たつろう)
- 免疫学講座 大学院生
- 研究グループ
- 菅谷竜朗1) 2)、石田由美1)、町田豪1) 、吉田大貴3)、林学2)、 関亦正幸3)、大平弘正2)、関根英治1)
1) 福島県立医科大学 免疫学講座、
2) 福島県立医科大学 消化器内科講座、
3) 福島県立医科大学 附属放射性同位元素研究施設
今回の受賞について
【日本補体学会について】
日本補体学会は、自然免疫において重要な役割を担う「補体」の生体防御機構と、それに関連する疾患をテーマとする歴史ある学会です。本年度の学術集会は、第60回という節目の会となっており、「Tipping point in complement therapeutics」をメインテーマとして、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を中心に、遺伝性血管性浮腫や自己免疫疾患などに関連した臨床研究と抗補体薬の可能性、魚やマウスを用いた基礎研究など、多彩な演題で討論が交わされました。また、通常の学会に加えて「補体疾患シンポジウム」という、補体異常症、補体関連疾患における抗補体薬の位置付けを俯瞰する特別企画も行われました。
【賞について】
本学術集会の一般演題で発表をした大学生・大学院生または35歳以下の研究者の中から、原則1名を対象として、特に優秀な演題に対して与えられる賞です。
概要
補体は、古典経路、第二経路、レクチン経路とよばれる3つの異なる活性化経路を通じて活性化され、病原微生物による感染からの生体防御や、アポトーシス細胞のクリアランスなど、生体恒常性の維持に機能しています。虚血再灌流障害(Ischemia/reperfusion injury: IRI)は、外傷・大量出血・敗血症などにおいて、組織の低酸素血症および再灌流後の炎症により発症する障害であり、肝移植を含む肝臓手術においても、IRIのメカニズムが肝不全を含めた肝障害に関与することが報告されています。近年では、肝臓IRIの病態に補体が関与すること、および、腎臓IRIの病態に補体レクチン経路の認識分子の中の「新規コレクチン」の1つであるcollectin-11(CL-11)が関与していることが報告されていますが、肝臓IRIにおける新規コレクチンの関与は不明でした。
そこで申請者は、CL-11ならびに、CL-11とトリマーを形成するcollectin-10(CL-10)の2種の新規コレクチンに着目し、肝臓IRIへの関与を明らかにすることを目的としました。CL-10とCL-11それぞれを単独欠損するマウスを作製して、野生型マウスと共に肝臓IRI誘導モデルを作製した結果、CL-10とCL-11のいずれの欠損マウスにおいても、野生型と比較して肝障害が血清学的および病理学的に著明に改善することを明らかにしました。以上の結果から、マウスの肝臓IRIモデルにおいて、CL-10とCL-11が肝障害の発症に関与することが示されました。
本研究は、肝臓IRIの病態機構において、補体レクチン経路の認識分子であるCL-10およびCL-11が重要な役割を担うメカニズムを初めて示した成果であり、肝臓IRIに対してCL-10とCL-11を標的とする新規治療法の開発に発展し得るものであると考えられます。
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 医学部 免疫学講座
電話: 024-547-1148(内線2232)
FAX: 024-548-6760
講座ホームページ: https://www.fmu.ac.jp/cms/immunol/index.html
メールアドレス:immunol@fmu.ac.jp(スパムメール防止のため、全角やスペースを含む表記をしています)