
- 内 悠奈 (うち・ゆうな)
- 放射線健康管理学講座 MD-PhDコース生
- 研究グループ
- 内悠奈、澤野豊明、川島萌、榊原守、須藤眞樹子、柳内和子、大槻真子、堀有伸、尾崎章彦、山本知佳、趙天辰、及川友好、丹羽真一、坪倉正治
概要
論文掲載雑誌:「Annals of the ICRP」(April 1, 2024)
2011年3月11日に発生した東日本大震災及びそれに伴う福島第一原子力発電所事故は、主に間接的な健康影響をもたらしました。災害時の間接的な健康影響は時として死につながります。日本では、自然災害による負傷の悪化又は避難生活等における身体的負担による疾病により死亡し、災害弔慰金の支給等に関する法律(昭和48年法律第82号)に基づき災害が原因で死亡したものと認められたものを災害関連死と定義しています。現時点で、放射線・原子力災害の影響を強く受けた地域における災害関連死に関する研究は限られています。
我々は、福島第一原子力発電所に近接する福島県南相馬市において、南相馬市災害弔慰金等支給審査委員会により災害関連死と認定された520人を調査しました。平均年齢は82.7歳であり、男性267名 (51.3%)、女性253名 (48.3%)でした。災害発生から死亡までの平均日数は230日であり、6ヶ月以上が37.8%を占めました。災害関連死と認定された理由で最も多かったのは「避難による移動」(25.8%)で、次いで「適切な治療が受けられなかった」(20.4%)でした。
現在の日本における災害関連死のガイドラインの1つである長岡基準では、6ヶ月後以降の死は災害との関連が低いとされます。しかし、本研究の結果は、自然災害に放射線・原子力災害が重なることにより災害発生後6ヶ月以上経過した死亡も災害関連死の認定となる可能性が高いことを示唆しています。避難による被災者への健康影響が長期にわたって及ぶことが背景にあるとみられ、放射線・原子力災害における間接死を防ぐためには特に長期的な対策が必要であると考えられます。本研究結果は2024年4月1日にAnnals of the ICRP誌に原著論文として掲載されました。(内 悠奈)
連絡先
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