福島県立医科大学 研究成果情報

スイス誌「Frontiers in Public Health」掲載(令和6年1月15日オンライン)(2024-02-19)

Disaster-related deaths with alcohol-related diseases after the Fukushima Daiichi nuclear power plant accident: case series

福島第一原子力発電所事故後のアルコール関連疾患を伴う災害関連死:ケースシリーズ

北澤 賢明 (きたざわ・けんめい)
放射線健康管理学講座 MD-PhD学生
        
研究グループ
北澤賢明, 澤野豊明, 内悠奈, 川島萌,吉村弘記,村上道夫, 野中沙織, 齋藤宏章, 榊原守, 柳内和子, 大槻真子, 尾崎章彦, 山本知佳, 趙天辰, 内山大雅, 及川友好, 丹羽真一, 坪倉正治

概要

論文掲載雑誌「Frontiers in Public Health」(令和6年1月15日)


 アルコール関連疾患を持つ方は、他の疾患と比較して、ストレスや治療の中断など様々な環境変化の影響を受けやすいという特徴があり、災害復興期に特に注意が必要な疾患の一つです。
 放射線災害後のアルコール関連疾患患者の亡くなった原因については不明な点が多く、この点を明らかにすることで、今後、放射線災害が発生した際にアルコール関連疾患による災害関連死を最小限にとどめるとともに、予防することを目的としています。
    南相馬市で災害関連死と認定された方々のうちアルコール関連疾患に伴う災害関連死と認定された方は6 名でした。この6 名の死亡時平均年齢は53 歳であり、南相馬市で災害関連死と認定された全体の平均死亡年齢83 歳と比較して、若い年齢でした。また、災害から死亡までの日数は、全体の平均が231日であったのに対し、6 名は平均342 日であり、死亡までの日数が長いことが示されました。6 名のうち5 名は、発災前にアルコール関連疾患の治療を受けていました。多くのケースで病院閉鎖のため避難を余儀なくされ、入退院を繰り返すうちに病状が悪化していました。発災前にアルコール関連疾患の治療を受けていませんでしたが、避難から帰宅後に不眠や食欲不振のため服薬・飲酒を増やし、うつ病が悪化した方もいました。
 以上のことから、避難を契機にアルコール関連疾患が慢性期に悪化し、最終的に震災後に死亡に至った可能性が明らかになりました。原子力災害を含む今後の大規模災害の慢性期においては、アルコール関連疾患の治療中の方やストレスで飲酒量が増える傾向のある方への、避難所や医療機関での注意深い観察と適切な医療的ケアの必要性が示唆されました。

(北澤 賢明)


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