- 三村 耕作(みむら・こうさく)
- 消化管外科学講座 准教授
- 河野 浩二(こうの・こうじ)
- 消化管外科学講座 主任教授
- 研究グループ
- 三村耕作1,2,尾形高士3, Phuong Nguyen4, Souvick Roy5, Hassen Kared4, Yate-Ching Yuan6, 7, Michael Fehlings4, 吉本由哉8, 吉田大作9, 中嶋正太郎1, 佐藤久志8, 町田望10, 山田貴允3, 渡辺洋平1, 田巻倫明8, 藤川寛人3, 井口靖弘10, 早瀬傑1, 花山寛之1, 佐瀬善一郎1, 加藤弘之9, 髙橋史朗11, 大島貴3, Ajay Goel5, 12, Alessandra Nardin4, 鈴木義行8, 河野浩二11
- 1) 福島県立医科大学 医学部 消化管外科学講座
- 2) 福島県立医科大学 医学部 輸血・移植免疫学講座
- 3) 神奈川県立がんセンター 消化器外科(胃食道)
- 4) ImmunoScape
- 5) Department of Molecular Diagnostics and Experimental Therapeutics, Beckman Research Institute of City of Hope
- 6) Translational Bioinformatics Division, Center for Informatics, City of Hope National Medical Center
- 7) Department of Computational Quantitative Medicine, City of Hope National Medical Center
- 8) 福島県立医科大学 医学部 放射線腫瘍学講座
- 9) 神奈川県立がんセンター 放射線治療科(光子線・重粒子)
- 10) 神奈川県立がんセンター 消化器内科(消化管)
- 11) 岩手医科大学 情報科学科
- 12) City of Hope Comprehensive Cancer Center
概要
論文掲載雑誌:「Journal for ImmunoTherapy of Cancer」(January30、2024)
近年、抗PD-1抗体を用いたがん免疫療法は、手術・抗がん剤治療・放射線治療と並び、進行胃がん症例に対する主な治療方法の1つとして確立されました。しかし、その単剤投与での効果は約11%と限られています。我々は今までに、局所放射線治療はがん免疫療法に不可欠である細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導するものの、CTLは腫瘍微小環境で抑制されていることを報告してきました。それらの基礎研究の成果を基にして、我々は当講座主導で臨床試験「標準治療不応の切除不能な進行・再発胃がんに対する局所放射線療法とNivolumab(抗PD-1抗体)併用療法の第I/II相臨床試験(CIRCUIT試験)」を行い、ニボルマブと局所放射線治療を併用した複合がん免疫療法の安全性と治療効果(生存期間の延長など)を国際科学誌(Communcations medicine、2023年)に報告しました。
CTLの攻撃標的であるがん細胞上の抗原は、HLA-Aの型によって変わります。そのために本研究では、CIRCUIT試験に登録された症例の中で日本人に多いHLA-A型を示す症例を対象とし、局所放射線治療に伴う新たなCTLの出現や同複合がん免疫療法奏功群におけるCTLの特徴などについて、複数の免疫学的手法を用いて解析しました。その結果、局所放射線治療により、がん細胞上の抗原を認識する新たなCTLが誘導されていること、それらのCTLはニボルマブ治療中も存在し続ける傾向にあることが示されました。さらに、同複合がん免疫療法奏功群におけるがん抗原特異的CTLは、CD45RO(+)CD27(+)CD127(+)セントラルメモリーT細胞という特徴を呈していることが明らかとなりました。
本研究により、進行胃がん症例において局所放射線治療により新たながん抗原特異的CTLが誘導されること、さらに同複合がん免疫療法奏効群におけるがん抗原特異的CTLはある一定の特徴を呈していることが示されました。これらの結果は、進行胃がん症例において同複合がん免疫療法は有効な治療戦略の1つであることを免疫学的に示唆しており、今後の実地臨床への応用が期待されます。
(三村 耕作)
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 医学部 消化管外科学講座
電話:024-547-1111/FAX:024-547-1980
講座ホームページ:http://www.gi-t-surg.com/
メールアドレス:gi-tsurg@fmu.ac.jp(スパムメール防止のため、一部全角表記しています)