福島県立医科大学 研究成果情報

スイス国雑誌「International Journal of Molecular Sciences」掲載(令和3年4月6日)(2021-04-23)

Reduced Claudin-12 Expression Predicts Poor Prognosis in Cervical Cancer

クローディン-12タンパク質の発現低下は子宮頸がんの予後不良因子である

小林 信(こばやし・まこと)
医学部 基礎病理学講座 学内講師

Rahman Abidur(ラーマン・アビッド)
医学部 基礎病理学講座 大学院生

        
研究グループ
基礎病理学講座 大学院生・Rahman Abidur
基礎病理学講座 学内講師・小林 信
基礎病理学講座 講師・杉本 幸太郎
基礎病理学講座 教授・千葉 英樹
産科婦人科学講座 教授・藤森 敬也

概要

論文掲載雑誌:「International Journal of Molecular Sciences」(令和3年4月6日)


 細胞間接着分子クローディン・ファミリーは上皮細胞の間をつなぐ糊の役割を果たしています。クローディンはクローディン-1からクローディン−27まで20種類以上存在し、例えば皮膚ではクローディン-1/-4/-7が、腸ではクローディン-3/-4/-7が、血管ではクローディン-5が主に発現するなど、臓器ごとに特有の分布を示します。がんになるとこうした臓器特異的なクローディンの発現パターンが変化し、正常では発現しないクローディンががんになると発現したり、反対に正常で発現するクローディンががんになると発現しなくなったりすることが知られています。よってクローディンをがんの診断マーカーとして利用する試みは以前より活発に行われていました。

 我々のグループが以前、クローディン-12が腸管のカルシウム吸収に重要であることを解明しました(Fujita et al., Mol Biol Cell, 2008)。しかしながらクローディン-12の発現状態を評価できる病理診断に有用な特異抗体が長らく開発されておらず、人体におけるクローディン-12蛋白質の発現はよくわかっていませんでした。

 そこで我々はまずクローディン-12を特異的に認識する優れたモノクローナル抗体を開発しました。その抗体を用いて、子宮頸がん患者さんから提供していただいた手術標本におけるクローディン-12の発現量を解析しました。その結果クローディン-12の発現が高い患者さんでは10年後の生存率が80%以上であった一方、クローディン-12の発現が低い患者さんでは60%以下に下がっていました。よって今後は、クローディン-12の発現量に応じて治療の強度を変えるなど、クローディン-12を「予後予測マーカー」として活用できる可能性が期待されます。子宮頸がん患者さんは全世界で50万人以上といわれていますが、本研究は患者ひとりひとりに合った個別化治療戦略医療を推進する上で有用な知見を提供するものです。またクローディン-12は卵巣がんや大腸がんなど様々な臓器のがんで発現していることから、本研究で得られた抗体はさらに多くの患者の診断や治療に役立つ可能性を秘めています。

 


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