福島県立医科大学 研究成果情報

欧州雑誌「International Journal of Environmental Research and Public Health」掲載(2019年12月)(2020-01-16)

Association of Anxiety over Radiation Exposure and Acquisition of Knowledge Regarding Occupational Health Management in Operation Leader Candidates of Radioactivity Decontamination Workers in Fukushima, Japan: A Cross-Sectional Study.

福島県の放射線除染作業指揮者における正確な労働衛生管理知識の保有と被ばく不安との関連:断面研究

日高 友郎 (ひだか・ともお)
医学部 衛生学・予防医学講座 講師
        
研究グループ
日高友郎・各務竹康・遠藤翔太・春日秀朗・増石有佑・熊谷智広・佐藤勢・佐々木拓真・福島哲仁

概要

論文掲載雑誌:「International Journal of Environmental Research and Public Health」(2019年12月)


放射線除染作業員が安全に働くためには、除染作業に関する労働衛生管理の知識を正しく保有する必要があります。一方で、正しい知識の保有・獲得は、放射線被ばく不安に影響するとも言われています。知識とそれに関連するリスクに対する不安との関係を明らかにすることは、より実践的・効果的な労働支援の実現に繋がる、産業保健における重要課題です。

本研究では、現場での作業員の労働衛生管理を担う放射線除染作業指揮者を対象に、労働衛生管理の知識習得を目的とした講習会の前後で、知識の保有状態・被ばく不安がどのように変化するのか、またその関連性を検証しました。結果、「作業環境管理の正確な知識を獲得した場合に、被ばく不安が高まる」ことが明らかとなりました。その他の、作業管理・健康管理に関する知識と被ばく不安との間には関連性はみられませんでした。

除染作業に関する作業環境管理の内容は、作業現場の事前線量測定などで構成されます。つまり、作業環境管理は自分だけでなく、他の労働者の安全・健康にも大きく影響します。本研究の対象者は、作業環境管理の正しい知識を身につけたことで、被ばくリスクや仕事の責任を実感し、それが却って不安を喚起したのかもしれません。一方、知識が不正確な者は、そもそもの知識が不足している故に危険性を理解できず、したがって被ばく不安を感じることもなかったと解釈されました。

身体的な健康リスクを低減するための知識が、むしろ精神的な健康リスクを増加してしまうかもしれない―こうしたジレンマを乗り越えていくために、正確な知識を獲得するための教育的支援と、被ばく不安に対する精神的支援とを並行して実施していくことが求められます。行政、関係機関とともに今後対策に取り組んでまいります。


連絡先

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