福島県立医科大学 研究成果情報

米国雑誌「Scientific Reports」掲載(2019-12-30)(2020-02-14)

Complement activation by autoantigen recognition in the growth process of benign prostatic hyperplasia

前立腺肥大症増殖過程における自己抗原認識による補体活性化機構

秦 淳也(はた・じゅんや)
医学部 泌尿器科学講座 学内講師

小島 祥敬(こじま・よしゆき)
医学部 泌尿器科学講座 教授

関根 英治(せきね・ひではる)
医学部 免疫学講座 教授

町田 豪(まちだ・たけし)
医学部 免疫学講座 講師

        
研究グループ
泌尿器科学講座 秦 淳也、松岡 香菜子、星 誠二、 赤井畑 秀則、平木 宏幸、小川 総一郎、片岡 政雄、 羽賀 宣博、小島 祥敬
免疫学講座 町田 豪、関根 英治
生体物質研究部門 鈴木 俊幸、本間 好

概要

論文掲載雑誌:「Scientific Reports」(2019-12-30)


 本論文の内容は、戦略的学内連携研究推進事業の一環として、泌尿器科学講座と免疫学講座の共同研究として行った研究の成果になります。

 前立腺肥大症は中高年男性の約10%に発症する疾患です。加齢に伴って増加し様々な下部尿路症状(頻尿、排尿困難など)をきたす慢性増殖性疾患です。前立腺肥大症の多くは、男性ホルモンで肥大が進行しますが、最近ではそれ以外の因子の関与も指摘されており、詳細な増殖メカニズムはわかっていませんでした。

 私たちは今まで、そのメカニズム解明のために、モデルラットを用いた網羅的遺伝子発現解析を行いました。その結果、前立腺肥大症の増殖過程で、補体の活性化が確認されました。そこで本研究では、前立腺肥大症と補体の関係に着目して解析を行いました。補体とは一般的に、生体内から病原微生物を排除する自然免疫機構として知られていますが、最近では補体の活性化による炎症の増幅作用が、様々な疾患に関与することが報告されています。

本研究では、モデルラット、ヒト前立腺肥大症組織を用いた解析により、前立腺肥大症の増殖過程に、補体の活性化が関与することが証明されました。さらに、補体活性化の原因として、前立腺内の4つの自己抗原による自己免疫反応が関与する可能性が考えられました。

 本研究の成果は、前立腺肥大症と補体の関連を示した世界で初めての報告になります。今後この研究成果が発展すれば、前立腺肥大症の発症メカニズムの解明および新規治療薬の開発につながる可能性があり、既存の薬剤に抵抗性の前立腺肥大症患者にとって、多大な恩恵を与えうる研究成果であると考えています。


連絡先

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