福島県立医科大学 研究成果情報

第12回インテリジェント・コスモス 奨励賞 〔平成25年5月受賞〕(2013-05-16)

「特定神経回路の機能制御による行動生理学的解析    ~学習を司る神経回路の機能制御~」

加藤 成樹 (かとう・しげき)
福島県立医科大学 医学部附属生体情報伝達研究所 生体機能研究部門 講師
        

今回の受賞について

「インテリジェント・コスモス奨励賞」は、公益財団法人インテリジェント・コスモス学術振興財団(宮城県仙台市)が、東北インテリジェント・コスモス構想 の一環として、広く学術振興を図るために、科学技術分野において独創的で優れた研究テーマを持つ、将来有望な若手研究者 に対し授与する賞です。
東北7県の大学等に所属している40歳(医歯薬系は42歳)以下の若手研究者を対象としており、平成14年度から実施されています。

これまで本学では、平成18年度に細胞科学研究部門 初沢清隆 助教授(現 鳥取大学教授)、平成20年度に解剖・組織学講座 亀高 諭 講師、平成22年度に腎臓高血圧・糖尿病内分泌内科学講座 谷田部 淳一 博士研究員、平成23年度に生化学講座 苅谷 慶喜 学内講師 が受賞しています。(所属・職階は受賞当時のものです)
奨励賞授与式は5月20日、仙台市にて行われました。


概要

脳内には、非常に多くの異なる性質を持つ神経細胞とそれらの細胞同士の神経連絡を司る神経回路ネットワークが形成されています。1つ1つの神経回路には、様々な行動を制御するための役割がありますが、非常に複雑にネットワークが形成されているため、特定の神経回路機能を明らかにすることはこれまで実質的に不可能でした。 本課題では、はじめに特定の神経回路のみを遺伝子標識するための新しいベクターの開発を行いました。このベクターは、投与した脳領域の神経終末から取り込まれ、軸索を逆行性に輸送して遺伝子を細胞体に導入する性質を持ちます。次に本ベクターと分子遺伝学的技術を組み合わせることで、遺伝子標識した特定神経路の機能を抑制したモデルマウスの作出を行いました。 このモデルマウスは、光刺激依存的な弁別学習課題においてその学習の獲得および実行に重要な役割を示すことを見出しました。本ベクターは特定神経回路の機能抑制だけでなく、神経細胞の促進性活動制御にも応用が可能であり、今後は学習機能を媒介する神経回路の機能調節により、さらに詳細な解析が期待されます。 また、ベクターを投与する脳領域を変えることで他の神経回路がどのような行動制御に関わるかを明らかにすることが期待され、神経回路研究を大きく牽引する新しい技術として普及することが見込まれます。

(加藤成樹)


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