福島県立医科大学 研究成果情報

2013年度 ISSLS 最優秀演題賞 〔平成25年5月受賞〕
Best Paper Award at the International Society for the Study of the Lumbar Spine Annual Meeting 2013(2013-05-17)

「Psychosocial stress is associated with onset of low back pain  with disability in college students:  a longitudinal study before and after the disaster in Fukushima 」

加藤 欽志 (かとう・きんし)
福島県立医科大学 医学部 整形外科学講座 助教
        

今回の受賞について

【The International Society for the Study of the Lumbar Spine : ISSLS】
本学会は、1974年に設立され、腰椎における全ての研究分野を包括した、同分野における国際的に最も権威のある学会です。
毎年開催される年次集会では、腰椎に関する解剖学・生理学・生化学・工学的な基礎研究から、疫学研究、新規治療法に関する臨床試験など、様々な演題が討論されます。

【Best Paper Award】
本学会では、年次集会において全ての口演演題の中から、最も優れた演題をプログラム委員会が選出して表彰します。
本年度は、5月13日~17日にかけて、アメリカ合衆国のアリゾナ州スコッツデールで年次集会が開催され、本学の医学部整形外科学講座 加藤欽志 助教が選出・表彰されました。 授賞式は5月17日、年次集会の閉会式にて行われました。

概要

心理社会的ストレスは、腰痛の発症や慢性化に影響を与えることが知られています。 しかし、対象者に意図的に心理社会的ストレスを与え、腰痛発症との因果関係を検討した縦断研究は、倫理上の制約から過去に報告されていませんでした。 我々は、2011年1月に、福島県立医科大学医学部・看護学部の学生を対象とした腰痛とストレスに関する前向きコホート研究 を開始していました。 しかしながら、2011年3月に東日本大震災を経験した事により、対象者全員に心理社会的ストレスが加わることとなりました。そこで我々は、震災後4ヵ月の時点で、再度、腰痛とストレスに関する調査を行い、東日本大震災によって学生に加わった心理社会的なストレスが、腰痛の発症に関与したかについて検討しました。 対象者の約3割が震災後4ヵ月の時点で、震災前と比較して、強い心理社会的ストレスを抱えていました。 ストレスが不変であった学生の腰痛発症率は約30%で、そのうち約8割は日常生活に支障のない腰痛でした。一方で、ストレスが悪化した学生の腰痛発症率も同様に約30%でしたが、そのうち約6割は日常生活に支障をおよぼす腰痛でした。 すなわち、心理社会的ストレスは、日常生活に支障をおよぼす腰痛の発症を増加させる可能性がある事が示唆されました。 今回の研究では、世界で初めて、心理社会的ストレスが「日常生活の機能障害を伴う」腰痛の発症率を増加させることを縦断研究で証明することができました。 本研究では、同時に心理社会的ストレスに対するストレス対処行動と腰痛の発症についても検討しており、今後も調査を継続することにより、心理社会的ストレスによって発症した腰痛に対し、どのようなストレス対処行動が有効かを明らかにすることも期待されています。

(加藤欽志)


連絡先

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