看護の現場スペシャリスト紹介
Nursing scene
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専門性を高め、
その先の看護へ
院内には専門看護師・認定看護師をはじめ、専門知識を生かして活動するナースが多くいます。患者さんに質の高いケアを提供するとともに、現場のスタッフからの相談や教育活動にも取り組み、知識や技術の向上を目指しています。
疾患をみるよりも
その人にふさわしい看護を考えていく
- 認知症看護認定看護師
病棟の院内感染対策担当看護師から
認定看護師へ
- 感染管理認定看護師
心と身体を
つないだケアを提供
- 精神看護専門看護師(リエゾンナース)
現場から医療を開始できる
フライトナース
- 救急看護認定看護師
原発事故後に放射線を学修
院内での啓蒙・教育を通して有事に備える
- 被ばく医療
がん患者へよりよいチーム医療を
提供するために多職種連携の要としての
役割を果たす
- がん看護薬物療法認定看護師
チーム医療を円滑に進めるための
コーディネーター役
- 慢性心不全認定看護師
被災者が安心して日々の生活が
送れるように寄り添ったケアを行う
- 日本DMAT隊員
- 感染管理認定看護師
感染管理認定看護師を目指すきっかけ
きっかけは上司からの勧めでした。それまで病棟の院内感染対策担当看護師として活動していましたが、認定看護師になろうとは考えていませんでした。そんな折、感染制御部へ異動という勧めがあり、そこで初めて感染管理認定看護師についての説明を聞きました。専門的な知識が必要な業務であると感じました。
それまで自分の将来について具体的なイメージを持っていませんでしたが、より専門性を生かした業務を行っていきたいと考えるようになり、感染管理認定看護師を目指そうと思いました。
看護部からのバックアップ
看護部の配慮もあり、感染制御部へ異動し、先輩の感染管理認定看護師のもと、感染管理認定看護師の業務・活動内容を学ぶことになりました。現場で体験したことは大きな糧になったと思っています。
その1年後に資格取得のため半年間の認定看護師教育課程を受講しました。その時の必要経費等については病院からのサポート体制もありました。
感染制御部へ異動後も、以前同様に看護部長・副部長に相談することもあり、都度良いアドバイスをもらっています。
感染管理認定看護師の役割
感染管理の業務は組織を横断的に活動することが求められており、看護師だけでなく、医師、薬剤師、検査技師、事務職、その他病院で働くすべての職員に対して、感染対策の指導・相談を実施しています。看護師ではありますが、このように多職種と関われるのは認定看護師の中でも感染管理分野ならではと思います。
感染管理認定看護師について院内でもっと知ってもらい、いつでも相談できるような関係性をつくっていければと思っています。
これから、病棟や外来の感染対策担当看護師との連携をさらに深め、院内感染対策の強化につなげていきたいと考えています。
- 精神看護専門看護師(リエゾンナース)
リエゾン精神看護とは
精神看護のサブスペシャリティーであるリエゾン精神看護は心と身体をつないだケアを提供することを専門としています。
リエゾン精神看護領域を担当する精神看護専門看護師は、一般的にはリエゾンナースと呼ばれ、私は福島県立医科大学看護学部に所属し、附属病院でその活動をしています。
身体疾患や精神疾患をもつ患者や家族に対して質の高い看護を提供するために病棟の皆さんと一緒に考え、実践しています。
この職務の醍醐味
看護師のメンタルヘルス支援、教育的支援もリエゾンナースの活動の目的のひとつ。患者さんの一番近くにいる病棟の看護師が精神的に健康な状態でなければ質の高いケアは提供できません。看護師の様々な不安や悩みなどを聞いて、課題をクリアできるようなサポートをしています。相談してくれた看護師が、実践の経過や患者さんの反応をイキイキと報告してくれた時にこの職務の醍醐味があります。
- 救急看護認定看護師
フライトナースの役割
福島県立医科大学附属病院は、救命救急センターのうち、特に高度な診療機能を提供する高度救急救命センター。
緊急性や重症度の高い患者さんの社会復帰を支えるため、ドクターヘリは医師・看護師・消防など複数の職種・機関が連携して対応にあたります。治療開始までに時間がかかれば、それだけ痛い思い、苦しい思いが長く続きます。特に交通事故などの大きな怪我や脳梗塞や心筋梗塞などの重い病気は時間との闘いです。
面積が広く、医療過疎地域を抱える福島県においては、発症から病院到着までに時間がかかります。ドクターヘリの重要性は現場から医療を開始できるというそのスタイル。あらゆる場面で重篤な患者さんに高度医療を提供できることに誇りが持てます。
私が大切にしていること
フライトナースはいち早く患者さんのもとに駆けつけ、適切な初期治療をすることが最優先です。その中で、私が大切にしていることは、どんな過酷な状況でも看護師として、挨拶や笑顔、気配りを忘れず、医師・整備士・操縦士・CS(運航管理担当)・消防関係者、病院で待つ看護師などのスタッフに敬意をもって活動することです。
今後、取り組みたいこと
ドクターヘリで対応する患者さんは年齢・性別・疾患問わず、要請があれば全てに対応します。同じ疾患であっても患者さんの背景によっては、対応は異なるかもしれません。どのような患者さんに、どのような看護を行うのか、自分がどう考え行動したのかは、なかなか他人には伝わりづらい部分です。これらを他のフライトナースに伝わるような症例検討や事例発表を行っていきたいです。情報を共有することによって、フライトナースのみならず、救急に携わるスタッフの知識や技術の向上に役立てるのではないかと思います。
- 被ばく医療
災害医療(被ばく医療)を目指したきっかけ
2011年の福島第一原子力発電所事故がきっかけです。当時は手術部に勤務していましたが、放射線を意識することはありませんでした。様々な情報が溢れる中、何を信用すればいいか分からないまま過ごしたように記憶しています。そのような状況の中で、当時の看護師長から長崎大学の大学院を紹介され、放射線についてしっかり学びたいと思って進学を決めました。
看護部の計らいで、福島県立医科大学に在籍したまま、研修生として長崎大学病院放射線部に勤務し、夕方は社会人大学院生として講義を受けることができました。修了後も同じ職場に戻れるようご配慮いただけたことで安心して学ぶことができました。
災害医療(被ばく医療)における自身の役割
福島県立医科大学附属病院は「原子力災害拠点病院」「高度被ばく医療支援センター」「原子力災害医療・総合支援センター」であり、放射性物質による汚染がある傷病者や高線量被ばく患者に対する医療対応、他の原子力災害拠点病院への医療支援、高度専門教育研修を行う使命があります。
その中で私自身の役目は、被ばく医療や原子力災害医療における看護の啓蒙活動、教育をすることであると考えています。事故から約10年が過ぎ、放射線教育に関してもさらなる進展が必要です。スタッフ向けの研修は定期的に実施できている状況ですから、今後は看護管理者向けの研修を企画し、災害に備えていきたいと思います。
原子力災害は極めて発生頻度の低いものですが、一度発生すれば広範囲かつ長期に渡る影響を引き起こします。今後も被ばく医療、原子力災害医療を知ること、各フェーズにおける看護の役割や必要性について伝え続けたいと思います。
大切にしていること
私は、看護師も、放射線に対する適切なリスクの相場観をもつことが大切だと考えています。ICNでは「看護とは、あらゆる場であらゆる年代の個人および家族、集団、コミュニティを対象に、対象がどのような健康状態であっても、独自にまたは他と協働して行われるケアの総体である」と定義されており、被ばく医療の基本概念は「いつでも、どこでも、だれにでも最善の医療を提供すること」です。放射性物質による汚染の有無に関わらず、看護師は最善の看護を提供する必要があります。そのために放射線を正しく理解し、放射線による影響を正しくアセスメントし、適切に許容できることが重要です。
通常の看護において、被ばく医療・原子力災害医療の優先順位は決して高くありません。しかし万一の災害時には大きな不安が生じ、普段できている看護さえ躊躇してしまう事態が推測されます。いざという時に不安が少なくて済むよう、適切に患者対応できるよう、それによって職務満足度・自己肯定感が高くなるように、未来の笑顔を信じて日々取り組んでいます。
- がん看護薬物療法認定看護師
がん薬物療法看護認定看護師を目指すきっかけ
私は、血液内科病棟に所属していた時にがん薬物療法後の患者さんへセルフケア支援をしていく中で、がん薬物療法看護に興味を持ち、認定看護師を目指しました。また、知識が豊富で、視野の広い先輩のがん化学療法看護認定看護師さんと一緒に働いたことも認定看護師を目指したことに強く影響しています。
研修へのサポート体制
研修機関の選定など受験に関する様々なサポートをしていただきました。研修中はeラーニング実施時間の確保、自施設で行う特定行為研修の指導医の調整、他部門への情報収集の協力、研修費・住居費等の費用補助もあり、安心して研修に集中することができました。認定審査の際も、学習に集中できるように環境への配慮をしていただきました。
当院でのがん薬物療法看護認定看護師の役割
今、がん治療は遺伝子変異などに合わせて個別化医療となっています。免疫チェックポイント阻害薬をはじめ、様々な新規薬剤が承認され、治療が非常に複雑化しています。そのため、がん薬物療法看護認定看護師が看護実践のモデルとなり、安全・確実な投与管理や有害事象のマネジメントを行っていく必要があります。患者さんへよりよいチーム医療を提供するために、多職種連携の要としての役割が課せられていると考えています。また、特定行為研修を修了した認定看護師として、臨床推論力、病態判断力を活かしていきたいです。
- 慢性心不全認定看護師
慢性心不全認定看護師を目指すきっかけ
近年、医師、看護師だけではなく、薬剤師、検査技師などのコメディカルスタッフなど医療に携わる全ての職種がそれぞれの専門性を活かし、連携して病院内で横断的に患者さんの治療にあたる「チーム医療」が求められています。補助人工心臓(VAD)チームでは診療科や所属を超え、チーム構成メンバーが幅広く集まっており、看護師においては、手術部~ICU~救命センター~病棟~外来間の看護師間連携が取れています。
私が慢性心不全認定看護師を目指したきっかけには、まさにそういった背景があり、周囲を納得させるだけの自分自身の知識やスキルが不十分であり、勉強の必要性を強く感じたからです。
VADチームの活動について
外来やリハビリ、退院前の外出・外泊トレーニング、復職支援のための職場訪問などを多職種で行っています。また、月に2回 VAD多職種カンファランスを開催し、倫理的検討や患者それぞれの目標や着地点をチームで設定し、誰ががいつまで何をやるかを決めています。さらには、地域連携を進めるため、地域後方病院や消防署での勉強会も開催しています。
チーム医療の中心はあくまでも患者さんです。患者さんを主語とする共通目標を持ち、各職種がそれに向かって自分の得意なこと、やるべきことを最大限に発揮できるよう心がけています。
チームにおける看護師が果たす役割
VADチームにおいて看護師が果たす役割は、継続的に意思決定支援に関わり、患者さんの思いを引き出し、患者さんの自己決定の擁護者となることです。具体的には、創部管理やシャワー浴など、在宅療養に向けた各種トレーニングの指導をします。チーム医療を潤滑に進めるためのコーディネーター役として関われていると思えます。
- 日本DMAT隊員
DMAT(災害派遣医療チーム)を目指すきっかけ
DMATとは、「災害急性期に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チーム」と定義されています。DMATを知ったのは、入職をしてからでした。配属された救命救急センターの先輩がDMAT隊員だったので、派遣された時の話を聞き、実際の現場での看護師の役割の重要性、被災者に寄り添う大切さを感じました。さらに私自身もその一員として、先輩方と一緒に活動していきたいと思うようになりました。
インストラクターを目指して
派遣を通して、被災者のニーズに合わせ、多職種と協働することの大切さを学ぶことができました。これまで救命救急センターで得た知識や技術を活かせたり、自身のスキルアップにも繋がる良い経験が得られたと思います。
これまでの経験をもとに、次の世代の育成もしていかなければならないと思い、現在はインストラクターを目指しています。研修に参加する際には、病院から交通費の補助、所属では勤務調整などをサポートしていただいています。DMATの隊員養成研修への参加、インストラクター研修のためのサポート体制は十分整っています。
実際の活動で大切にしていること
DMATとして何を行うべきなのか、優先順位はどうなのか、と考えさせられることがたくさんありました。被災者が少しでも安心して日々の生活が送れるよう、被災者に寄り添ったケアを行うことを心がけています。活動を通じて、限られた資源・人材で災害を乗り切るチーム医療、多職種との連携が重要であるということを学び、その経験が日々の看護にも役立っていると感じています。
福島県立医科大学附属病院は、
福島県で最も多い
認定看護師・専門看護師を
擁してます。
認定看護師
- 感染管理
- 慢性心不全看護
- 集中ケア
- クリティカルケア
- 救急看護
- がん化学療法看護
- がん放射線療法看護
- がん性疼痛看護
- 緩和ケア
- 新生児集中ケア
- 呼吸器疾患看護
- 不妊症看護
- 摂食・嚥下障害看護
- 手術看護
- 皮膚排泄ケア
- 認知症看護
専門看護師
- 小児看護
- 精神看護
- がん看護
- 急性・重症患者看護
目指すきっかけ
入職以降一般病棟で経験を積んだのち、心身医療科病棟に異動をしました。心の病を患っている方への看護に難しさを感じつつも、声のかけ方や接し方一つで症状が改善していく様子をみて、精神科看護の奥深さに触れました。その後にコロナ禍となり、隔離環境でせん妄を発症したり、認知機能が低下していく患者さんに対して、限られた時間で十分な看護が提供できないことに自分の知識や技術の限界を感じました。そのような時に資格取得を勧められ、せん妄や認知症に対する専門知識を習得することで、疾患の治療に専念できる安全な環境を患者さんに提供できるのではないかと思い、認知症看護認定看護師になることを決意しました。
今後取り組みたいこと
当院は急性期病院であるため、認知症を専門的にみるというよりも他の疾患の治療のために入院する方がほとんどです。認知症の症状は多種多様であり、安全管理や倫理的な視点から現場のスタッフは対応に困ることが多いと思います。急性期病院においては、認知症の症状を悪化させずに退院してもらうことが最優先の課題となるため、各病棟における認知症看護の経験をより多くのスタッフで共有し、共に考え、認知症看護の実践力向上を目指したいと思っています。そのためには、リンクナースの活用や多職種連携等のチーム活動が必要であると考えています。認知症は病気ではありますが、疾患をみるよりも、認知症の「その人」をみて、その人にふさわしい看護について考えていきたいと思っています。