血管生物医学分野





1.DNA損傷と心血管病

 近年個体あるいは細胞老化が心血管系におよぼす影響が急速に明らかになってきた。
 現在我々は老化モデルマウスSMP30欠損マウスを用いてSMP30の動脈硬化性疾患における役割を検討している。
 老化の生物学的な特質の一つにゲノムの不安定性がある。我々はこれまで動脈硬化巣にDNA損傷が蓄積していること(図1)、coronary risk factorである喫煙により末梢血単核球においてDNA損傷が生じることなどを報告してきた(図2)。現在DNA損傷が冠動脈疾患の発症メカニズムに如何に関わっているのか、基礎的および臨床的な検討を行っている。

図1:ヒトの動脈硬化巣におけるDNA損傷の蓄積
(Ishida et al. PLoS One 2014;9:e103993を改変)


図2: 喫煙によるDNA損傷の増加
 (Ishida et al. PLoS One 2014;9:e103993を改変)



2.医療放射線の心血管系への影響

 近年画像検査を含む医療放射線の人体への影響が問題視されている。我々は医療放射線の人体、特に心血管系におよぼす生物学的影響をDNA損傷定量を用いて調査している(図3)。

図3: 単回の心臓CTによる末梢血単核球のDNA2本鎖切断
  (Fukumoto et al. Eur Radiol 2017;27:1660を改変)



3.Cardio-oncology

 ガン患者に対する化学療法あるいは放射線治療が心血管系に及ぼす影響は、患者の予後およびQOLを大きく左右するため、近年ガン治療において重要な課題となりつつある。我々は担ガン患者あるいはcancer survivorの心血管系機能・形態を包括的に評価/フォローする院内の体制を構築中である。これらの評価を行うことにより心血管系合併症を早期に発見するとともに、得られたデータを詳細に解析することにより、合併症をきたしやすい「high risk群」のプロファイルを明らかにすることを目指している。

文責:石田隆史



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