リュージュ(龍樹)の伝言

第7回:南相馬元気モール

2012/12/22

 今年の8月28日、南相馬市内のショッピングセンター「ジャスモール」の中に「南相馬元気モール」がオープンした(以下「元気モール」と表記)。( http://genkimall.npoharamachiclub.jp/ )。

 

 「いつ来て いつ帰ってもいい、まちのみんなの第3の居場所」という元気モールは、NPO法人はらまちクラブ( http://npoharamachiclub.jp/ )理事長の江本節子さんら地元の人たちの夢だった。「健康づくりを医療者や介護者まかせにせず自分たちで元気になろう」と、協力する会社とともにコンソーシアムを創立、経済産業省の平成23年度「東北復興に向けた地域ヘルスケア構築推進事業」の委託を受けてついに実現した。スタッフは皆、みずから被災者でありながら被災者を助けることを一生懸命楽しんでいる。だからこそ、被災地で「一隅を照らす」暖かい灯火になれるのだ。

 

 東日本大震災と福島第一原子力発電所事故で宙に浮いてしまったが、当講座では福島県と地元地域の人たちと協力して、地域医療再生計画の一環として2011年4月から地域・家庭医療センターを双葉町に開設して家庭医療の診療と家庭医の養成を地域を舞台に行う計画であった。江本さんと私との最初の出会いは、そのセンター開設へ向けて地域の人たちに家庭医・家庭医療を知ってもらう講演会を開催してもらった時である。その講演会では、はらまちクラブの子どもたちで結成されたチアリーダーが「地域!医療!」と元気な声と振り付けで一生懸命大人たちの計画を応援してくれていたのがとても印象的だった。

 

 その後の運命は過酷だった。いろんな困難があった。でも不思議な運命の再会があり、江本さんら地元の人たちの夢を聴くことができたのは私にとって本当に幸いだった。特に被災地での地域医療の復興を考える時に、そこに住む地元の人たちの視点が最も重要であることを教えてもらった。外部からさまざまな支援がされていても、それが地域の人たちにはどう思われどう役に立っているのか。インターネットなどを通して時に華々しく伝えられることと、実際に地域の人たちがどう満足しているかとの間には大きな溝がある。「健康づくりを医療者や介護者まかせにせず自分たちで元気になろう」という元気モール設立の原点となった地域の人たちの差し迫った思いに、医療人である私たちは謙虚に自分たちの活動を振り返るべきだろう。

 

 元気モールでは、医療介護周辺サービスの情報ステーションとしてのサービス紹介、介護講座、健康チェック、よろず相談、日替わりで行われている体操(みんなの体操、貯筋体操、ゆる体操)、娯楽(囲碁、将棋、輪投げ)、手芸教室(編み物、パッチワーク)、そして「お茶べり」(お茶とおしゃべり)など、赤ちゃんからお年寄りまで楽しめるサービスを提供している。さまざまな困難を乗り越えてきた人たちが、一緒に集い、語らい、からだを動かし、笑顔になれるワン・ストップ・ステーションである。

 

 ありがたいことに私もアドバイザーとして仲間に加えていただいて、毎月お邪魔している。私のゆるキャラまで作ってもらった。私は、元気モール運営へのアドバイスに加えて、健康相談や「ゆる体操」という身体のケアのための体操を紹介しているのだが、この頃は行くたびに元気モールに集まる人たちが増えているのに驚かされる。多くの人たちに笑顔が見られるようになってきた。元気モールに通って元気をもらっているに違いない。

 

 江本さんたちの「一隅を照らす」活動が、今後も持続可能な財源を得て、さらに多くの地域の人たちの生活を継続して支えていけるように願っている。



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