リュージュ(龍樹)の伝言

第17回:タスマニア(上)

2013/03/04

 タスマニアにはやさしい時間が流れている。前回の『伝言』に引き続いて、またタスマニアからブログを送ろう。

 

 毎年恒例となっている当講座の海外家庭医療先進地視察ツアーとして、今年度はオーストラリアの南の島、タスマニアにやって来た。面積は北海道の80%ぐらい、州都のHobartは南緯42度に位置し、北海道とよく似た気候である(ちなみに札幌は北緯43度)。ここは南半球なので、今はちょうど盛夏を過ぎた季節で、明るい日差しに爽やかな風がそよいでいる。

 

 海外家庭医療先進地視察がどのようなものかについては『伝言』の第8回に書いたが、では、なぜタスマニアなのか。「へき地での家庭医療とその教育を見たい」という当講座の後期研修医中村光輝君(通称ミッチェル)の希望に沿うには、他にもハワイのハワイ島やカナダの北オンタリオなどいくつかのオプションがあった。その中でもタスマニアに決めたのは、昨年10月に英国スコットランドのグラスゴーで開催された英国家庭医学会(RCGP)の年次学術大会(Annual Primary Care Conference)にplenary speakerとして招待された時に、Western Australiaの友人Geoff Rileyに再会したためだ。彼はWestern Australia大学の教授で彼自身そこのRural Clinical Schoolの学長だが、今回私のリクエストに応えて、日本からのアクセスが「比較的」容易なタスマニアを訪問することを勧めてくれて、彼が良く知っているタスマニアの家庭医たちを私に紹介してくれたのだ。  

 

 私たちはメルボルン経由で、タスマニアの北部のDevenport空港に到着した。空港にはLizziが迎えに来てくれた。Lizziは、BurnieにあるRural Clinical School(RCS)の准教授で、Ulverstoneという町の診療所で家庭医療指導医をしている。へき地を含めて広いタスマニアを効率良く移動するためにレンタカーを借りてLizziの車の後について出発だ。その夜は、Lizziのお宅のバーベキュー・パーティに招かれて、日本に住んだことがあるLizziの友人たちも参加して私たちを歓迎してくれた。

 

  翌日からのタスマニア北部の訪問・見学では、まずBurnieにあるGP Super Clinicと呼ばれる家庭医診療所とRCSを訪問した。RCSはユニークな教育機関で、連邦政府のDepartment of Health and Ageingが予算を出し、各州の大学医学部と連携して、全国で17校が運営されている。主として医学部4年生と5年生のへき地での臨床教育(診療所での家庭医療と地域病院での救急・急性期ケア)を担当している。大学がへき地に複数のキャンパスを持っているような感じである。医学部学生だけでなく、看護学、薬学、心理学などの学生の教育にも重要な役割を持っている。へき地を一流の臨床教育の舞台にしようという熱意が成果をあげている。

 

 ちょうど新学期が始まったところで、RCSには医学生がローテーションで来ており、私は彼らを含め40人ほどの人たちに東日本大震災・津波・原発事故後の福島の地域医療の状況について話をさせてもらった。この話は、TV会議システムによって、タスマニア大学関連の他の5サイトにも中継された。その後、ローカル新聞『The Advocate』の記者から取材を受けた。さらにABC(Australian Broadcasting Corporation)ラジオの電話取材も受けた。RCSには、こうしたRCSの活動や地域のニュースをメディアにつなぐ専門の部署があり、フットワークの良い担当者Rachaelのお蔭で、タスマニアの人たちが日本や福島のことに興味を持ってもらえる機会となった。この新聞記事とラジオ放送も、さっそくRCSのホームページ(http://www.utas.edu.au/rural-clinical-school/ )からのリンクで参照できるようになっている。

 

 タスマニアの訪問・見学はさらに続く…。



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