リュージュ(龍樹)の伝言

第29回:はじめてのフレンチ

2013/08/14

 全国的に記録的な猛暑になっているところに「こってりした話」と思われるかもしれないが、お世話になっている友人夫妻と義父を招いて、先日フレンチを作ってみた。以前のこの『伝言』でも書いたことがあるが、私の趣味のひとつは料理である。ただ、餃子(中華)やパスタ(イタリアン)、パエリア(スパニッシュ)などはよく作るが、フレンチは初めてだ。フレンチフライやフレンチトーストがフランス料理と言うなら初めてではないが(笑)。

 

 なぜこの夏にフレンチなのかというと、いくつか理由があるが、一番大きなものは、あの三國清三シェフの影響である。2回前の『伝言』でポラリス保健看護学院の新校舎完成の記念式典に招待された話を書いたが、この新校舎には調理実習室があり、何とプロ仕様のオープンキッチンが備わっているのである。必死に建てたものにこうした遊び心があるところが心憎い。

 

 このお披露目の日に私たちゲストはこのキッチンに招かれて、三國シェフが語りながら調理するのを目の当たりにしたのだ。しかも私の座席はシェフに最も近かった。このインパクトは大きかった。「うま味」が何であるかも直接教えてもらった(この答えはまだ秘密にしておく)。

 

 実は、かつて私が北海道にいた2002年に、JR北海道の駅弁に三國シェフがプロデュースしたお弁当が期間限定で売られていて、その立方体の紙箱の中にカラフトマス・帆立・ズワイガニ・蒸しウニ等の北海道の幸を詰め込んだ「ミクニBOX」が、外観も中身も他の駅弁とは一線を画していたのを覚えている。

 

 この食事会の記念にと、三國シェフから彼のサイン入りの本をいただいた。いままで私が見たことのある数少ないフランス料理本は、とにかく難しそうだった。手順が込み入っている。7〜8つあるのがざらだ。ところが三國シェフの料理本の手順はどの料理もせいぜい4つ、長くて5つぐらいとシンプルである。そこが「自分にもできそうだ」という「あまちゃん」心をくすぐったのだ。そこで義父や友人夫婦にちょっといいところを見せようという行動にでたのだ。

 

 メニューは「漬けマグロの三色ソース」、「ごろごろ野菜のラタトゥイユ」、「すずきソテー、ゴーヤソース」(ゴーヤは夏の元気の素!)、「ビーフステーキの赤ワインソース」。下線をひいたものは、三國シェフから直々にご馳走になったメニューだ。デザートは(ここでシェフが家内に交代して)シナモンを効かせたチャイアイスとゲストの友人夫妻からいただいた手土産のフルーツでしめた。

 

 お料理の味は、当然「あまちゃん」の作品なのであの日の味とは比べるのも不遜だが、幸い私はあの日の味を思い出すことができた。もっと幸いだったのは、ゲストたちが大喜びしてくれたことだ。これは料理の作り手に取っては格別に嬉しい。

 

 話は「大転換」するが、医療も似たところがある。私たちのケアを利用してくれた人が癒された時に私たちが感じる喜び。たとえ治癒が難しい状況でも、それでも前向きになろうとしている姿が私たちに感銘を与える。医療者は、実は私たちのケアを必要とする人たちから癒されているとも言えるのだ。もう15年も前になってしまったが、このことを論文に書いて『ランセット』に載せたことがある(Lancet 1998; 352: 642–44)。

 

 今日は、喜多方市民から「ほっと☆きらり」の愛称で呼ばれる私たちの診療・教育の拠点のひとつ「喜多方市 地域・家庭医療センター」へ行っていた。行きの郡山駅からのJR磐越西線は、夏休みとお盆が重なって満員だった。『八重の桜』効果もあるのだろう。

 

 その喜多方の「ほっと☆きらり」を舞台として8月24日〜25日に開催される当講座恒例の「家庭医療サマーファーラム」も、いよいよ来週末に迫って来た。とても楽しみだ。夏の会津観光も兼ねて多くの人たちに参加してほしい。

(申し込みは、comfam@fmu.ac.jp  まで。まだ間に合います。)



リュージュ(龍樹)の伝言
カテゴリ
見学・実習希望
勉強会開催予定
フェイスブック公式ページ

pagetop