テコンドーで学んだこと:板の向こう側を見る
- 教授
- 安田 尚子
- やすた たかこ
- 言語学(第二言語音韻論)、英語教育学(ライティング、発音指導)
ハワイでの大学院時代、言語学のデータ分析で韓国語に触れる機会が多くありました。韓国語に興味を持った私は、ハワイにいながら韓国文化に浸る、ちょっと変わった生活を送っていました。韓国国技の武道、テコンドーもその一つです。体験程度のつもりで始めましたが、気がつけば韓国の国技院で師範教育を受け、国際師範の資格をいただくに至りました(ちなみに型の選手でした)。
ハワイの道場では「ギョッパ」と呼ばれる板割りの試験がありました。昇級するにつれて板は重ねられ、厚くなっていきます。初めて挑戦したときは一枚。それでも思いきり打ち込んだ手は跳ね返され、板はびくともしませんでした。手は痛く、「ああ、無理だ」という感覚でした。
そのとき師範に言われました。
「ダメだと思わないこと。そして割ることを意識するのではなく、割れた“その先”、板の向こうをイメージしなさい。」
イメージで変わるものかと半信半疑で試してみると、すんなり割れました。後から考えると、「無理かも」と思った瞬間に力は板の表面で止まり、力任せに打ち込んだ分だけ強く反発していたのです。しかし板を通り抜けるイメージを持つと、力は止まらずに抜けていきました。
この体験で実感したのは、「無理だ」という思いは無意識のブレーキになるということです。うまくいった結果を具体的に思い描けるかどうかは、大きな違いを生みます。私自身、今でも「うまくいかないかもしれない」と思うことはあります。それでも、準備を重ねた上で「大丈夫だ」と思える状態をつくることが大切だと感じています。何かに取り組むとき、本当に必要なのは力の強さそのものより、その先を見る視線なのかもしれません。