言葉のパワー
- 教授
- 安田 尚子
- やすた たかこ
- 言語学(第二言語音韻論)、英語教育学(ライティング、発音指導)
私は某ゲーム会社で日本一有名なRPGのスタッフでした。その関係か呪文に興味があり、結果的に言語学者になってしまったのかもしれません。英語で呪文はspellといいます。つまり「文字を綴る」ことで攻撃したり回復させたりするわけです。マニアックなRPGだと記号を配列して呪文を作り、その効果をプレーヤーが試すものもあります。記号の配列次第では「その組み合わせは魔法効果がない」のようなメッセージが出たりします。
漫画「呪術廻戦」の登場人物、狗巻棘は言葉が具現化してダメージを与える呪言師なので、言葉で人を傷つけないようにおにぎりの具で会話をしています。漫画の世界なので棘の一言で吹っ飛んだりしていますが、多かれ少なかれ私たちが使う言葉にも同様の効果があります。私たちが選ぶ言葉の配列、つまりspell次第で相手の心に爆発が起きたり、もしくは回復効果で癒しになったりします。私の授業「言語と社会」では、そんな言葉のパワーを扱っています。特に医療に関わる人は、腕の技術のみではなく、どういう魔法の言葉で人を癒せるか、というspell能力が重要かと思います。