情報としての生命

 「攻殻機動隊」というSFアニメ映画(漫画が原作)を皆さんはご存知でしょうか?

 世界的に有名な作品ですが、漫画自体は1989年からスタートし、映画は1995年に公開されました。舞台は近未来、2029年の日本で活躍する公安のチームが遭遇する「人形使い」と呼ばれるハッカーとのやりとりが主軸の物語ですが、この映画の中で人形使いと「生命」について問答するシーンがあります。人形使いは「あなたたちのDNAもまた自己保存のためのプログラムに過ぎない。・・生命とは情報の流れの中に生まれた結節点のようなものだ」と自らの生命観を述べます。

 現代の生物学は「DNAに生物の遺伝情報がたくわえられている」ことをすでに突き止め、その情報のデータベース化を行い、得られた情報(の一部)から内容を引き出す、さらには情報を書き換えるといったことが比較的容易にできる地点にあります。

 最近では、「合成生物学(生命システムを総合的に理解するとともに、生命を設計・作成・操作する工程を含む)」と呼ばれる生物学の分野が特に勢いを増しています。合成生物学では生物を部品としてとらえ、回路のように遺伝情報をデザインして新たな生物(特に微生物)を作り出し、DBTL(Design-Build-Test-Learn)という工学的サイクルを経た新たな生物の創造が今まさに行われているところです。こうした試みは、ヒトと比較にならないほどの情報処理能力を持つAIと相性が良く、今後も益々加速してゆくことが予想されます。2000年あたりに終了したヒトゲノム計画(ヒトの全ゲノム情報を読む)からすでに20年以上が経過し、現在の生物学は、生物の持つ「情報」としての側面と、それに付随する機械論的な生命像をさらに際立たせているようにも思えます。

 冒頭の「攻殻機動隊」、核となるテーマは我々の「自我」がどこから来るのかという深淵なテーマを扱っているのですが(その中で情報の結節点である「生命」も重要な意味を持っています)、人形使いと主人公は互いの持つ「情報」を通して衝撃的な結末を迎えます。

 公開後30年を経ても全く色褪せない作品を是非観てみてください。

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