放射線の非標的効果「遺伝的不安定性」と「バイスタンダー効果」のメカニズムを探る
- 准教授
- 有吉 健太郎
- ありよし けんたろう
- 放射線生物学
放射線の生物影響は、被ばく直後に生じるものから数年〜数十年経過して生じるものがあります。これまでの研究から、放射線を被ばくした細胞が生き残った後に、ゲノムの不安定化(DNA損傷や染色体異常など)が子孫細胞において現れる「遺伝的不安定性」と言われる現象が見つかっております。
そしてもう一つ、放射線による「バイスタンダー効果」という、放射線を被ばくした細胞からの何らかのシグナルによって、放射線を被ばくしていない細胞(バイスタンダー細胞)にゲノムの不安定化が引き起こされる現象です。
「遺伝的不安定性」も「バイスタンダー効果」も被ばくした細胞から被ばくしていない細胞へと及ぼされる影響といえますが、「遺伝的不安定性」は時間的な広がりを持ち、「バイスタンダー効果」は空間的な広がりを持つ現象だといえます。私の研究テーマは、この2つの現象を通じて、時間的、空間的距離を持った放射線の生物影響を調べています。
写真はバイスタンダー細胞の細胞核(青)とDNA二重鎖切断のマーカーであるγH2AX(緑)で染色した像です。直接放射線を被ばくしていない細胞にDNAダメージが起きていることが見て取れます。
