基礎研究とAI
- 教授
- 北爪 しのぶ
- きたづめ しのぶ
- 病態生化学、認知症生化学、癌生物学、糖鎖生物学、細胞生物学、バイオマーカー探索
ここ最近のAIの発達はすさまじく、AIの登場は産業革命に匹敵するほどの出来事でないかと思っています。研究面でもAIの存在感は増しており、無視することはできなくなりました。特に書類作成作業などは圧倒的にAIは優れています。私達くらいの年代(?!)の研究者ですと、今まで自分でやってきたことをあっという間にAIが仕上げてしまうと、なにクソと言う思いもありましたが、今は極めて有能な秘書あるいは執事のように感じています。まず翻訳作業が素晴らしい! 今までなんとか英語で論文を仕上げた後に英文校閲会社に送って1週間ほどかけて有料でブラッシュアップをしてもらっていました。ところがAIでは、即座に同じ作業をしてくれます。英文校閲会社が倒産してしまうのでないかと心配になるくらいです。それどころか、外国の研究者との英語のメールでのやりとり、ちょっとした研究報告書の作成なども、非常に頼りになります。論文作成に関してAIを活用することには議論があるところですが、将来は否応なしに使う時代になるのではないでしょうか?
さて、では基礎研究において人がAIよりも有意に立てる点はどこか、というとやはり「実験力」に尽きるように思います。産業界では多検体を扱うことが多いため、自動分注機や自動分析器の普及率が急拡大しています。その上、AIを活用した実験ロボットも一部の大学や研究機関では導入されはじめました。操作内容も、細胞培養やウエスタンブロット、免疫沈降など多岐に渡っています。ただし、コストを考慮すると大学や研究機関に入ってくるのは限定的であると思います。そして、一度も大学で手を動かしたことのない人がロボットから予想外の実験結果を得られたときに適切な考察を行えるのでしょうか? やはり実験にはある程度の経験値が求められると思います。また、企業は常に利益を優先して考えないといけないでしょうが、大学の研究者には、これは将来ものになるかどうか分からないけど、まずは試してみよう!という実験を行う余地が残されています。このようなお試し実験によって、AIにも予想できない結果が出てきたら、なんだか嬉しくなってしまいます。まだまだ大学院の実験はAIに取って代わられることはないでしょう。