大学院医学研究科 入学式
大学院医学研究科入学式 学長式辞 (令和8年10月1日)
本日、福島県立医科大学大学院医学研究科博士課程に入学された9名の皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。福島県立医科大学のすべての教職員を代表して、心から歓迎いたします。また、今日まで皆さんを支えてこられたご家族、関係者の皆様にも、お祝いを申し上げます。
皆さんはこれから、大学院生として新たな一歩を踏み出します。大学院での学びは、すでにある知識を身につけるだけのものではありません。まだ答えのない問題に向き合い、自ら問いを立て、確かな方法で検証し、その成果を社会に示す営みです。今日という日は、専門家として知識を深めるだけでなく、新しい知を生み出す研究者として歩み始める日でもあります。
医学と医療を取り巻く環境は、大きく変化しています。人口減少と高齢化、医療人材の偏在、新たな感染症や災害への備え、そして人工知能やデジタル技術の急速な進歩。どの課題も、一つの専門分野だけでは解決できません。自らの専門性を磨きながら、異なる領域の知識や価値観に触れ、他者と力を合わせることが、これまで以上に重要になっています。
本学は、東日本大震災と原子力災害を経験した福島の地で、県民の命と健康を守りながら、世界に向けて知を発信してきました。その歩みの中で私たちが学んだのは、科学は社会との信頼関係の中で初めて力を発揮するということです。優れた研究成果であっても、現場に届かず、人々の理解や行動につながらなければ、十分な価値を生みません。研究室や診療の現場で得た知を社会へ届け、社会から受け取った問いを再び研究へ戻す。その往復を皆さんには大切にしてほしいと思います。
私は、これからの大学に必要なのは「共創と知の循環」であると考えています。共創とは、それぞれが持つ知識や経験を持ち寄り、一人ではたどり着けない答えをつくることです。知の循環とは、大学で生まれた知を患者さんや地域、社会へ還元し、そこから生まれた新たな問いを教育と研究につなぐことです。大学院での研究は、決して自分一人のためのものではありません。皆さんの問いは、患者さんの未来や地域の課題、次の世代の医療につながっていきます。
大学院生活では、研究が思いどおりに進まない日もあるでしょう。仮説が外れ、データがまとまらず、自分の力不足を感じることもあると思います。しかし、研究における失敗は、前進が止まったことを意味しません。予想と異なる結果は、問いを見直し、物事を深く考えるための重要な手掛かりになります。どうか、すぐに答えを求めるのではなく、なぜそうなったのかを粘り強く考えてください。研究は、知識の量だけでなく、誠実さと忍耐力を鍛える場でもあります。
そして、研究倫理をすべての土台に置いてください。都合のよい結果だけを見る誘惑や、成果を急ぐあまり手順を軽視する危うさは、誰の身近にもあります。データに誠実であること、研究に協力してくださる方々への敬意を忘れないこと、分からないことを分からないと言えること。その姿勢が研究者への信頼をつくります。学位の価値を支えるのは、成果の華やかさではなく、そこに至る過程の確かさです。
皆さんにお願いしたいのは、問いを小さくまとめすぎないことです。目の前の実験や解析を着実に進めながらも、その研究が誰のためにあり、何を変えようとしているのかを繰り返し考えてください。また、自分の専門の外へ一歩踏み出し、指導教員、同僚、異なる分野の研究者と率直に議論してください。研究は孤独な作業を含みますが、独りだけでは完成しません。良い問いは、対話によって磨かれます。
皆さんが大学院で過ごす時間は、決して平坦ではないでしょう。しかし、困難に向き合い、考え抜いた経験は、学位取得後も皆さんを支える確かな力になります。本学は、皆さんの挑戦を全力で支えます。互いに学び合い、知をつなぎ、福島から新しい価値を生み出してください。
問いを恐れず、失敗を学びに変え、未来を拓いてください。
皆さんの大学院生活が実り多いものとなることを心から願い、歓迎の言葉といたします。
令和8年10月1日
公立大学法人福島県立医科大学
理事長兼学長 鈴木 弘行
事務担当 : 教育研修支援課
学生総務係: 電話024-547-1972
FAX 024-547-1984
Eメール gakuseik@fmu.ac.jp
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