大学院医学研究科 入学式

大学院医学研究科入学式 学長式辞 (令和7年10月1日)

大学院医学研究科の入学式で、スピーチをする新入生とそれを聞く教員や学生たちの様子。
大学院医学研究科の入学式でスピーチをする竹之下学長と花が飾られた壇上の様子。
大学院医学研究科入学式の集合写真

 本日ここに、令和7年度後期福島県立医科大学大学院入学式を挙行できますことは、この上ない慶びです。
 ただいま入学を許可された医学研究科博士課程の17名の皆さん、ご入学誠におめでとうございます。それぞれ専門は違えども同期として互いに支え合い、切磋琢磨して、共に志の成就を目指してください。私たち教職員一同も、出来る限りのサポートをしていきたいと考えています。

 さて、入学の祝辞を述べるにあたり、まず最初に福島を襲った歴史的惨禍と本学で医学を学ぶ心構えについてお話ししておきます。毎年、同じ話をしていることは承知の上ですが、触れないわけにはいかないことなのです。

 2011年3月11日の東日本大震災とそれに伴う津波災害や東京電力福島第一原子力発電所事故は、福島県に大きな傷跡を残しました。本学においても全ての教職員が被災者となったものの、医療人としての使命を果たすべく総力を挙げて行動し、附属病院の機能を守り抜きました。その後も「福島の復興を健康と医療の面から支えること」を歴史的使命として、倣う前例のない状況の中、数えきれないほどの試行錯誤を繰り返しながら今日を迎えています。その間には国内外を問わず多くの励ましや支援をいただき、そのおかげで本学は、高度な医療の提供はもちろんのこと、高いレベルの教育や研究が行える環境を整えることが出来ているのです。
 その福島の地で医学を学ぶ皆さんは、福島に刻まれた歴史、被災者の方々の悲しみ、苦しみ、悔しさについて知らない、関係ないという姿勢は許されません。そして、多くの支援のもとに高度な教育研究環境が整備された本学で学ぶ以上、本学へ寄せられた期待に無関心でいることは許されないのです。そのことを、本日この場で改めて胸に刻んで、新しい学びをはじめてください。

 さて、その新しい学びですが、皆さんが進む博士課程は大学における最上位の教育課程です。そして、教育とはいうものの、博士課程では手取り足取り何かを教わるのではありません。学問の最前線に立つ研究者の一員となって、自らの発想で、新たな知の創出を目指すことが求められます。これまで先人が切り拓いてきた知を継承し、さらに新たな知の資産を積み上げていくことを皆さんは期待されるのです。ただ、あらゆるジャンルの学問が詳細に細分化、専門化されている現在、さらにそこに新たな知を積んでいくことは生易しいことではありません。
 そこで意識して欲しいことがあります。それは「はみ出す」ことの重要性です。専門性が高くなるにつれて知らず知らず思考の幅、視野はどんどん狭くなってしまいます。その視野を意識的に拡げるために有効なのが、自分の専門領域から「はみ出す」ことです。皆さんはこれまで自分の得意とする専門分野という枠の中で学問を追求して来ました。今度は、これまで親しんできたその居心地の良いフィールドから出て、未知の知見に触れる冒険を自らに課すのです。自分が当たり前と捉えている枠組みの外に出て自分の専門領域を俯瞰してみる、当たり前と捉えていたことが当たり前ではない領域を知ることになります。すなわち、異質な知に触れることが、自分の思考の中に新しい選択肢を生み、知の創出に貢献するのです。よく言われますが「何かを極めるということはえり好みせず、端から端まで付き合うこと」ということです。今日を機に、自らを枠の外に「はみ出す」力を身に付けてください。
 そしてそのために必要なのが人間としての「しなやかさ」です。既存の知の枠組みをしっかり習得しつつ、その枠の外に出掛けて行く力を兼ね備えることで、皆さんのこれからの学びの質は格段に高いものになるはずです。 

Embrace lifelong learning with resilience and grace.
「しなやかに学び続けよ」

です。

皆さん一人一人が、今、胸に抱いている志を実現できることを願っています。 

 

令和7年10月1日
公立大学法人福島県立医科大学
理事長兼学長 竹之下誠一

事務担当 : 教育研修支援課

学生総務係: 電話024-547-1972
FAX 024-547-1984
Eメール gakuseik@fmu.ac.jp
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