解剖慰霊祭

医学教育、学術研究の進展のため、本学では系統解剖(学生の教育のため、人体の正常な形態と構造を解明するもの)、病理解剖、法医解剖を行っています。
その尊い御遺体を捧げた故人の徳を偲び、御霊の冥福を祈るため、遺族、来賓を招き、教職員、学生の出席のもとに、毎年秋に解剖慰霊祭を執り行っています。

第76回 福島県立医科大学解剖慰霊祭 学長式辞 (令和7年10月29日)

解剖慰霊祭の会場で、花に囲まれた祭壇が設置されている様子。
解剖慰霊祭でスピーチをする男性が、壇上で資料を手に持ちながら話している様子。背景には花や参加者の姿が見える。

本日ここに、第76回福島県立医科大学 解剖慰霊祭を挙行するにあたり、御遺族の皆様、御来賓の皆様と共に、教職員、学生一同、謹んで御霊前に哀悼の意を表し、御霊の安らかならんことをお祈り申し上げます。

本日、お供えをいたしました御霊は282柱であります。これまでに合わせて18,838柱をお慰めしてまいりました。そのおひとりおひとりの尊い御意志、さらには御遺族の方の深い御理解と御協力なくして、医療専門職の育成は成り立ちません。医師をはじめ医療に携わることを志す全ての者の育成のために御遺体を供してくださるという、その崇高な御心に対し、心より敬意と深謝の念を捧げます。

御遺体と直接触れ合うということは、単に人体の構造や仕組みを学ぶという一面的な意味を持つだけではありません。私達は、誰でも御遺体の前に立つと厳粛な気持ちを抱き、生命の尊厳を感じずにはいられません。そして、意識せずとも自らの全ての感覚が研ぎ澄まされていることに気づくはずです。そのような強い力を御遺体は持っておられます。学ばせていただく者は、その方の生前のお想いを推しはかり、御遺族の思いを考えずにはいられず、必然的に医療を志す者の使命とは何かについて深く考え、洞察力を磨くのです。つまり、御遺体は、何にも代えがたい教師として沈黙の中にも、私たちに医療に携わることへの覚悟、倫理感、患者さんやその御家族への思いやりといった、医療者として欠くべからざる心構えを御指導いただいているのです。

昨今は、生成AIやバーチャルリアリティの発達により、リアルなコミュニケーションを取る機会が少なくなっていると指摘されます。このような現代において、御遺体と向き合うことは、言葉にならざる言葉を介して深いコミュニケーションが存在することを知る貴重な機会であり、医療に携わる全ての者の根底に流れる共通の意識、すなわち生命に対する畏怖の念と人に対する慈しみを育む、不可欠の場となっております。

御遺体を供してくださいました皆様は、未来の医療を担う本学の学生たちが、あらゆる病と向き合い、医療を通して皆様の安心な生活の礎となること、そして、新たな学びと研究の成果を広く社会に届け、より高度な医療の発展に資する人材となることを願っていただいた方々であります。私たちはその願いと御期待に沿えるよう、学生達を、病に苦しむ人々の生命の輝きを守る医療人として育てること。そして、病の克服に挑戦する努力を惜しまず、少しでも医の高みに達すべく前進しようとする医療人として社会に送り出すことを御霊と御遺族の方々にお誓い申し上げます。

最後に、皆様の御高徳を偲びつつ、その御霊が安らかならんことをお祈りして、式辞といたします。

令和7年10月29日
福島県立医科大学 学長
竹之下 誠一

事務局 : 教育研修支援課

学生総務係: 電話024-547-1972
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