福島県立医科大学 研究成果情報

Angiotensin Ⅲ はangiotensin Ⅱtype 1 受容体ではなくtype 2受容体を介してアルドステロン産生を刺激し、血圧調節に関与する(2011-04-30)

論文題名 Angiotensin Ⅲ stimulates aldosterone secretion from adrenal gland partially via angiotensin Ⅱ type 2 receptor but not angiotensin Ⅱ type 1 receptor.
Angiotensin Ⅲ はangiotensin Ⅱtype 1 受容体ではなくtype 2受容体を介してアルドステロン産生を刺激し、血圧調節に関与する
著  者 谷田部淳一、米田実、谷田部緑、渡辺毅、Robin A Felder、Pedro A Jose、眞田寛啓
雑誌名 Endocrinology.
発行日 2011年4月(Epub: 2011年2月8日)
巻(号)、ページ 152(4):1582-8.
要   旨
Angiotensin Ⅲ (AngⅢ)は、Angiotensin Ⅱ (AngⅡ)とともに血圧調節、アルドステロン(Ald)の産生および分泌調節に深くかかわっている。今日まで、AngⅡによる情報伝達機構について多くの報告があるものの、AngⅢの働きについては不明な点が多い。本報告では、AngⅡ、AngⅢ、AngIV、Ang(1-7)がAld分泌と血圧調節に果たす役割についてin vivo、in vitroで検討した。
5週令の雄SDラットから単離した副腎をRPMI 1640にて培養し、10-6から10-8 MのAngiotensin関連ペプチドをそれぞれ添加した。一定時間経過後に培養上清を採取し、RIA法にてAld濃度を測定した。AngⅡ、AngⅢ刺激によりAld分泌は、300~500 %上昇した(n=6)。AngⅡ刺激によるAld分泌の増加はAT1、AT2受容体拮抗薬(それぞれCandesartan、PD123319)の共添加によりほぼ完全に抑制された。しかし、AⅢ刺激の場合に対する抑制効果は部分的であった。AngIV、Ang(1-7)刺激によっても弱いAld分泌増加が認められたが、AT1、AT2受容体拮抗薬による抑制は認められなかった。
次に、これらのAngiotensin関連ペプチドをラットに投与する実験を行った。10週令の雄SDラットをPentobarbitalで麻酔後、外頸静脈内にカテーテルを留置した。覚醒後、試薬をカテーテルより注入し、血圧の変化をTail Cuff法にて測定した。また最大の昇圧反応が得られた時点において血液試料を採取し、血漿Ald濃度を測定した。血圧は6 pmol/kg/minのAngⅡにて有意に上昇したが、AngⅢでは変化しなかった。一方、60 pmol/kg/minのAngⅢ投与で血圧は上昇した。AngIV、Ang(1-7)の投与では、血圧は変化しなかった。
血漿Ald濃度はAngⅡ投与後有意に上昇し、また低濃度、高濃度のAngⅢ投与でもそれぞれで有意な上昇が認められた。
AngⅢは、AT1、AT2受容体のみならず、他の何らかの経路を経由してAld分泌を刺激し、血圧調節に関わると考えられた。AngⅢは、AT1受容体拮抗薬を用いた際に見られるアルドステロンブレイクスルーの成因の一つであることが示唆された。