福島県立医科大学 研究成果情報

インテリジェント・コスモス学術振興財団「第10回インテリジェント・コスモス奨励賞」受賞(2011-05-13)

「細胞外マトリックス糖鎖による新たな癌シグナル増幅機構の解析」

癌組織における細胞外マトリックス上の糖鎖変化と癌との関係を調べる研究により癌生物学全体への新たな方法論的インパクトが期待されています。

苅谷 慶喜
福島県立医科大学 医学部生化学講座 学内講師
※ 細胞外マトリックスにはコラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン等があります。

「インテリジェント・コスモス奨励賞」とは

 財団法人インテリジェント・コスモス学術振興財団が東北インテリジェント・コスモス構想の一環として、「広く学術振興を図るために、科学技術分野において独創的で優れた研究テーマを持つ、将来有望な若手研究者に対し」授与するものです。
東北7県の大学等に所属している40歳(医歯薬系は42歳)以下の若手研究者を対象としており、平成14年度から実施されています。

本学からは平成18年度に細胞科学研究部門の 初沢清隆 氏が、平成20年度に解剖・組織学講座の 亀高諭 氏が、平成22年度に腎臓高血圧・糖尿病内分泌内科学講座の谷田部淳一氏が受賞しました。

今年度は5月12日に受賞者10名が報道発表され、本学からは生化学講座の苅谷氏が選ばれました。
5月16日、仙台市のホテルで授与式が行われました。

        

概要

「細胞外マトリックス糖鎖による新たな癌シグナル増幅機構の解析」
細胞外マトリックスには細胞が生きていく上で重要な情報が書き込まれています。細胞は細胞外マトリックスに接着することで、そうした情報を受け取り生命活動を維持しています。細胞外マトリックスには糖鎖と呼ばれるお砂糖の鎖がついています。この糖鎖も細胞外マトリックス情報の一部です。実は癌になると細胞外マトリックス上の糖鎖が変化することが知られています。これにより、健康な人とは異なる誤った情報が細胞に伝えられてしまうのです。この誤った情報が細胞運動の持続である場合は、結果として癌の浸潤・転移が引き起こされることになります。
苅谷氏の研究は、癌のシグナルに関与する細胞外マトリックスやその受容体タンパク質の糖鎖変化が癌のシグナル増強にどのような役割を果たしているのかについて調べ、癌の浸潤・転移に関与する様々な細胞外マトリックス上の糖鎖と癌の関係を解明しようとする研究です。癌組織におけるマトリックス上の糖鎖変化と癌との関係を調べるという従来と異なる研究アプローチは、現在の癌生物学を新しい段階に進めるものになるものと期待されます。
苅谷氏は博士号の学位を取得して以来、癌が作り出すタンパク質の研究を14年間研究してきており、研究が認められ、今回の受賞となりました。

 

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