
- 阿部 和道 (あべ・かずみち)
- 医学部 消化器内科学講座 講師
- 研究グループ
- 阿部和道1、和田明2,4、大島祥恵2、河野創一2、高橋敦史1、菅野有紀子1、今泉博道1、林学1、岡井研1、
丹羽真一3、矢部博興2、大平弘正1
1 福島県立医科大学 消化器内科学講座
2 福島県立医科大学 神経精神医学講座
3 福島県立医科大学 会津医療センター精神医学講座
4 東京大学医学部附属病院 精神神経科
今回の受賞について
第54回日本肝臓学会総会
一般社団法人日本肝臓学会は、肝臓学に関する研究の発表・連絡、知識の交換等を行うことにより、肝臓学に関する研究の進歩、普及を図り、わが国における学術の発展に寄与することを目的として1965年に設立された約1万人を擁する学会です。総会は、肝臓学の臨床、研究の分野で活躍するエキスパートが毎年一堂に会する学術集会です。
賞について
日本肝臓学会より、1年間の欧米誌「Hepatology Research」、和文誌「肝臓」に掲載された論文の中から優れた研究論文を対象に毎年授与されます。今年の授賞式は第54回日本肝臓学会総会(大阪国際会議場・大阪府大阪市)において行われました。
概要
近年、非侵襲的な脳機能マッピング検査として近赤外線スぺクトロスコピー(NIRS)が導入されています。この装置は、近赤外光を用いて頭皮上から脳活動を評価し、抑うつ症状の鑑別診断の補助検査として用いられています。一方、C型慢性肝炎の患者さんに対するインターフェロン(IFN)治療では、IFN投与中の精神神経症状の副作用が問題であり、早期発見が重要とされています。
そこで今回我々は、C型慢性肝炎の患者さんをIFN治療の有無で2群に分け、NIRSによる前向き評価を行いました。方法はNIRSを用いて言語流暢性課題(VFT)中の酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb)の相対濃度をIFN治療の開始時および4、12週間後に測定しました。また、同時期にうつ質問票(CES-D)を実施しました。その結果、IFN治療群では精神的な副作用の自覚がないにもかかわらず、投与12週間後に有意な前頭葉でのOxy-Hb濃度低下を示しました。同様にCES-Dのスコアにおいても、うつの診断には至らないものの治療開始時よりも12週間後で有意に高値を示しました。本研究でNIRSを用いて検出されたOxy-Hb濃度低下は前頭葉の機能低下を反映すると考えられ、IFN治療によって引き起こされたこの変化は、うつ状態の前段階に関連する可能性があることが示唆されました。今後も非侵襲的な本検査法は、肝疾患を有する患者さんの病態評価に有用なものと考えられます。
本研究は消化器内科学講座と神経精神医学講座が初めて共同で行った前向き研究であり、Hepatology Research (2017 Mar;47(3):E55-E63)に掲載されています。
(阿部 和道)
関連サイト
- 第54回日本肝臓学会総会
http://www2.convention.co.jp/jsh54/
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 医学部 消化器内科学講座
電話:024-547-1202/FAX:024-547-2055
講座ホームページ:http://www.intmed2.fmu.ac.jp/index.html
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