福島県立医科大学 研究成果情報

米国科学誌「Journal of Thoracic Oncology」掲載(平成30年4月オンライン)(2018-05-21)

Prognostic Impact of Tumor Mutation Burden in Patients with Completely Resected Non-Small Cell Lung Cancer: Brief Report

完全切除非小細胞肺癌症例におけるTumor Mutation Burdenの予後への影響

尾崎 有紀 (おざき・ゆき)
医学部 呼吸器外科学講座 助手
        
研究グループ
Owada-Ozaki Y, Muto S, Takagi H, Inoue T, Watanabe Y, Fukuhara M, Yamaura T, Okabe N, Matsumura Y, Hasegawa T, Ohsugi J, Hoshino M, Shio Y, Nanamiya H, Imai J, Isogai T, Watanabe S, Suzuki H.

概要

論文掲載雑誌:「Journal of Thoracic Oncology」(2018.April 11)


 肺癌の治療薬としていくつかの免疫チェックポイント阻害薬が使用されるようになりました。しかし、現在どのような特徴のある人が効果を得られるのかは十分にわかっていません。効果が得られやすい特徴の1つとして、腫瘍の遺伝子変異数(TMB)が多いことがこれまで報告されてきていますが、TMBの多寡がどのような臨床的特徴と関連するのかについては十分わかっていないのが現状です。今回、本学の研究者らはTMBの特徴を探るため、肺癌のTMBを調べて、TMBが手術後の再発率や予後と関連があるということを初めて明らかにしました。

 本学医学部 呼吸器外科学講座の尾崎有紀助手・鈴木弘行教授らの研究グループは、本学ふくしま国際医療科学センター 医療-産業トランスレーショナルリサーチセンターの磯貝隆夫教授・渡辺慎哉教授らの研究グループとの共同研究として、肺癌の遺伝子変異の解析に取り組んできました。その中で、肺癌の遺伝子変異数であるTMBが肺癌手術後の再発や予後と関連があることを見出しました。具体的には①TMBが高いと肺癌術後の予後が不良であること、②早期肺癌ではTMBが高いと予後不良に加え、再発しやすいということ、③肺癌の術後に補助化学療法を加えた場合でもTMBが高いと再発しやすいということを明らかにしました。TMBは免疫チェックポイント阻害薬の効果を予測する指標として注目されるようになり、免疫チェックポイント阻害薬を投与したあとの効果や予後との関連性については数多くの報告がありますが、肺癌の術後においてTMBが予後にどのような影響を及ぼすかを明らかにしたのは今回が世界で初めてです。

 さらに今回の研究から、TMBが高い場合の術後再発率が高いこと・術後補助化学療法を行ってもその傾向が同じであったことを考慮しますと、TMBの高い肺癌では、免疫チェックポイント阻害薬が術後補助療法として有効な可能性が考えられます。現在、世界では免疫チェックポイント阻害薬による術後補助療法の臨床試験がスタートしていますが、今回の結果は、どのような患者さんがより効果を得られるかを知るための足がかりになるかもしれません。

(尾崎 有紀)


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連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部呼吸器外科学講座 教授

鈴木弘行

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