福島県立医科大学 研究成果情報

米国雑誌「Journal of Biological Chemistry」掲載(令和5年8月3日オンライン)(2023-09-19)

Brain-specific glycosylation enzyme GnT-IX maintains levels of protein tyrosine phosphatase receptor PTPRZ,thereby mediating glioma growth

脳特異的糖鎖修飾酵素GnT-IXは、プロテインチロシンホスファターゼ受容体PTPRZのレベルを維持し、神経膠腫の増殖を制御する

長井 健一郎 (ながい・けんいちろう)
医学部脳神経外科学講座 助手
        
研究グループ
長井健一郎、鳴瀬悠、蛭田亮、藤井正純(福島県立医科大学脳神経外科学講座)、 高橋一人、宇月美和、北爪しのぶ(福島県立医科大学 保健科学部 臨床検査学科)、 橋本優子(福島県立医科大学 病理病態診断学講座)、 芳賀淑美、植田幸嗣(公益財団法人がん研究会)、 武藤優衣、川口寧(東京大学医科学研究所 感染制御分野)

概要

論文掲載誌:「Journal of Biological Chemistry」(令和5年8月3日)


神経膠腫は中枢神経系で最も頻度の高い原発性脳腫瘍です。画像診断技術、脳神経外科手術および放射線治療の進歩にもかかわらず、悪性神経膠腫を根治させる治療法はいまだ見つかっていません。以前から、プロテインチロシンホスファターゼレセプターZ(PTPRZ)が神経膠腫で高発現しており、PTPRZを標的とする実験で腫瘍増殖が抑制されることが報告されていました。PTPRZは、特有のヒトナチュラルキラー1(HNK-1)付加O-結合型マンノースコアM2糖鎖(NHK-1-O-Man)を含む多様な糖鎖で修飾されています。しかし、これらの特徴的な糖鎖の制御や機能は不明です。

まず我々はCRISPRゲノム編集技術を用いて、ヒト神経膠腫細胞LN-229においてPTPRZ遺伝子を欠損させると、異種移植片マウスにおいて腫瘍増殖が著しく抑制されることを証明し、神経膠腫の治療標的としてのPTPRZの可能性を確認しました。

さらに、複数の糖鎖解析から、神経膠腫患者由来のPTPRZおよび異種移植片神経膠腫由来のPTPRZは、外因性シグナルを介してNHK-1-O-Man糖鎖を豊富に発現していることを明らかにしました。

最後に、このNHK-1-O-Man 糖鎖合成に関わる糖転移酵素であるN-アセチルグルコサミン転移酵素IX (GnT-IX)の欠損がPTPRZタンパク質レベルを低下させることが報告されているため、LN-229細胞でGnT-IX遺伝子を欠損させたところ、in vitroおよび異種移植片マウスの両方で神経膠腫の増殖が有意に低下しました。これらの結果から、PTPRZおよびPTPRZの糖鎖修飾酵素GnT-IXが共に神経膠腫の有望な治療標的となる可能性が期待されます。

本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)(課題番号JP22cm0106484)、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業、および水谷糖質科学財団の研究助成金の支援を受けて実施しました。

(長井 健一郎)


連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 保健科学部 臨床検査学科 北爪しのぶ

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