福島県立医科大学 研究成果情報

スイス科学誌「Cancers」掲載(令和5年7月16日オンライン)(2023-09-19)

A Potential Biomarker of Dynamic Change in Peripheral CD45RACD27+CD127+ Central Memory T Cells for Anti-PD-1 Therapy in Patients with Esophageal Squamous Cell Carcinoma

食道扁平上皮癌患者における抗PD-1療法中の末梢血CD45RACD27+CD127+ central memory T細胞の動態変化による治療効果予測の可能性

佐久間 芽衣 (さくま・めい)
医学部 消化管外科学講座 大学院生
三村 耕作(みむら・こうさく)
消化管外科学講座 准教授

河野 浩二(こうの・こうじ)
消化管外科学講座 主任教授
        
研究グループ
佐久間芽衣、三村耕作、中嶋正太郎、金田晃尚、菊池智宏、楡井東、多田武志、花山寛之、岡山洋和、坂本渉、齋藤元伸、門馬智之、佐瀬善一郎、河野浩二

概要

論文掲載雑誌:「Cancers」(令和5年7月16日オンライン)


進行食道扁平上皮癌は、手術療法・化学療法・化学放射線療法を含む集学的治療で治療されていますが、依然として予後不良な悪性腫瘍の一つです。近年注目されている免疫チェックポイントを標的とした免疫療法は、T細胞の免疫機能を改善させ、その効果を発揮します。食道癌に対しても、抗PD-1抗体や抗CTLA抗体などの免疫チェックポイント阻害薬を用いた免疫療法が承認されました。しかし、その治療効果を予測するバイオマーカーは確立されていません。

今までに、化学療法や化学放射線療法が抗腫瘍免疫を活性化させることや、抗腫瘍免疫においてT細胞の中でもメモリーT細胞が重要な役割を果たしていることが明らかになっています。本研究では、食道扁平上皮癌患者における化学療法・化学放射線療法・ニボルマブを用いた免疫療法(ニボルマブ療法)に伴うT細胞の変動について評価し、それが各治療方法の効果を予測するバイオマーカーになり得るかどうか検討しました。T細胞の変動は、CD 45RA-CD27+CD127+T細胞(セントラルメモリーT細胞)の頻度とT細胞上の疲弊化マーカー(PD-1及びTIM-3)の発現について調べ、それらを癌の進行度(stage)毎・治療方法毎・治療効果毎に比較検討しました。

Stage IV症例において、PD-1陽性またはTIM-3陽性のCD4陽性T細胞の割合が、有意に多く認められました。また、化学放射線療法が施行された症例において、PD-1陽性のCD4陽性T細胞とTIM-3陽性のCD8陽性T細胞の割合が有意に多いことが判明しましたが、病理学的な治療効果判定とそれらの関連性は認められませんでした。一方で、セントラルメモリーT細胞の変動を解析した結果では、ニボルマブ療法の効果を認めなかった症例において、CD4及びCD8陽性セントラルメモリーT細胞の頻度が治療経過中に有意に減少していました。

 本研究の結果から、進行食道扁平上皮癌症例において、ニボルマブ療法中におけるセントラルメモリーT細胞の変動が、ニボルマブ療法の治療効果を予測するバイオマーカーとなる可能性が示唆されました。

(佐久間 芽衣)


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