福島県立医科大学 研究成果情報

英国医学誌「BMC Cancer」掲載(令和5年4月6日オンライン)(2023-08-01)

薬剤性間質性肺疾患を発生した切除不能膵癌に対する化学療法の臨床的意義についての検討-国内多施設共同観察研究-

Clinical benefit of subsequent chemotherapy after drug-induced interstitial lung disease in pancreatic cancer patients: a multicenter retrospective study from Japan

入江 大樹 (いりえ・ひろき)
消化器内科学講座 助手
        
研究グループ
1)入江大樹、鈴木 玲、高木忠之、杉本 充、佐藤雄紀、大平弘正(福島県立医科大学医学部医学部 消化器内科学講座)、2)大久保義徳(福島労災病院 消化器科)、3)浅間宏之、紺野直紀(福島赤十字病院 消化器内科)、4)野口祐紀、今村秀道(太田西ノ内病院 消化器内科)、5)渡辺 晃(大原綜合病院 消化器内科)、6)渋川悟朗(福島県立医科大学会津医療センター 消化器内科)、 7)中村 純、加藤恒孝、橋本 陽、栁田拓実、引地拓人(福島県立医科大学附属病院 内視鏡診療部)

概要

論文掲載雑誌:「BMC Cancer」掲載(令和5年4月6日)


 膵癌は難治癌の一つであり適切な薬物療法が治療の要となります。ゲムシタビン、ナブ・パクリタキセル併用療法(GnP療法)は切除不能膵癌に対する標準治療の一つであり、高齢者でも忍容性が高い事から世界中で広く使用されています。

 一方でGnP療法中に間質性肺疾患(ILD)を発生する症例が一定の割合(4-20%)で報告されており、このような症例に対するILD治癒後の化学療法の臨床的意義が明らかではありませんでした。

 今回の研究では2014年12月から2022年6月の間に福島県内の中核となる医療機関より化学療法が施行された切除不能膵癌の情報を収集し、ILD発症例のおける化学療法の治療効果、並びに適切な化学療法レジメンについて後方視的に検討しました。全施設よりILD発症例24例の情報が収集され、緩和治療群(7例)に比べ化学療法施行群(17例)で予後に有意の良好であること(データ未掲載)、化学療法レジメンに関してはティーエスワン単剤とmodified FOLFIRINOXの間では予後に有意な差がないことを明らかにしました。また、化学療法施行例では全例でILDの再発がみとめられませんでした。 

 上記の結果より、ILD発症例であっても化学療法を再開することで予後の改善が期待できることが示されました。多施設共同研究により診療方針を決定する上で重要な情報をまとめる事が出来たと考えています。

 

研究に協力して頂いた先生方にこの場を借りて御礼を申し上げます。

 


関連サイト

  • 論文
    https://doi.org/10.1186/s12885-023-10781-x

連絡先

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