福島県立医科大学 研究成果情報

米国科学誌「PLOS ONE」掲載(令和4年6月10日オンライン)(2023-01-20)

Factors associated with anti-severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2) spike protein antibody titer and neutralizing activity among healthcare workers following vaccination with the BNT162b2 vaccine

2回目ワクチン接種後の医療者における抗体価と中和活性の上昇に影響する因子について

小橋 友理江 (こばし・ゆりえ)
医学部 放射線健康管理学講座 大学院生
        
研究グループ
小橋友理江、島津勇三、坪倉正治 (福島県立医大、放射線健康管理学講座)
川村猛、金子雄大、児玉龍彦(東京大学)
西川佳孝、小俣文弥(ひらた中央病院)

概要

論文掲載雑誌:「PLOS ONE」(令和4年6月10日オンライン)


 本研究の目的は、SARS-CoV-2ワクチン接種後の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)スパイク(S1)タンパク質および中和抗体価の上昇に関連する要因を明らかにすることであった。

 本観察研究は、福島県の病院に勤務する医療従事者を対象に実施された。各参加者から2回、採血が行われた。一回目の採血は、BNT162b2(Pfizer-BioNTech)ワクチンの初回接種前に採取され,2回目の採血は、それから約6週間後に行われた。SARS-CoV-2のスパイク(S1)蛋白に対する免疫グロブリンG(IgG)抗体,SARS-CoV-2のN-蛋白に対する免疫グロブリンM(IgM)抗体,中和活性はiFlash 3000を用いた化学発光免疫測定法(CLIA)により測定された。1回目の採血時に抗SARS-CoV-2 IgM(N)抗体が陰性であった231名の医療従事者の情報が結果の解析に利用された。

 すべての方において、IgG(S)抗体と中和活性がカットオフ値を超えて上昇していた。新型コロナワクチン2回目接種後の採血では全員のIgG(S)抗体が陽性となった(中央値: 1739 AU/ml, 四分位範囲: 202–4211)。また、全員の中和活性が陽性となった。 (中央値: 703 AU/ml, 四分位範囲: 58–948)。合計174名(75.3%)と208名(90.0%)の参加者が、それぞれ1回目と2回目のワクチン投与後に副作用を経験した。若年,女性,免疫抑制剤や解熱鎮痛剤を常用していない,1回目の接種後に局所的な副反応がない,2回目の接種後に副反応(発熱,筋肉痛,関節痛)があることは,IgG抗体価または中和活性の高さと関連していた。ワクチンの副反応に対する鎮痛解熱剤の使用は,抗体価および中和活性の上昇に有意な影響を及ぼしていなかった。

 年齢、性別、内服、副反応などは新型コロナワクチン2回目接種後のピークの抗体価と関連している事が分かった。ワクチン接種後の免疫反応には個人差があり,これらの個人差を考慮した上での、SARS-CoV-2感染予防のための対策が必要であることが示唆された。


連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部 放射線健康管理学講座

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