
- 冨田 湧介 (とみた・ゆうすけ)
- 医学部 循環器内科学講座 大学院生
- 研究グループ
- 冨田湧介、三阪智史、義久精臣、一條靖洋、石橋 伸治、松田美津子、山寺幸雄、 大原妃美佳、菅原由紀子、寶槻優、渡邊孝一郎、安齋文弥、佐藤悠、佐藤崇匡、 及川雅啓、小林淳、竹石恭知
概要
論文掲載雑誌:「Clinical Research in Cardiology」(令和4年4月19日オンライン)
心不全 (HF) の病態生理における心臓と肝臓の相互作用は、いまだ十分に解明されていない。肝臓で合成・分泌されるヘパトカインは、末梢組織で代謝調節機能を持つ。
本研究は、HF患者におけるヘパトカインFetuin-Aの臨床的意義を明らかにすることを目的とした。入院中のHF患者187名と、年齢・性別が同等で、HF発症や心臓の構造的異常のない対照者30名を含む217名を登録した。まず、Fetuin-Aの濃度を調べたところ、HF患者では対照群に比べ有意に低いことが判明した。次に、腹部超音波検査で評価した肝臓の血行動態に基づき、腹腔動脈の収縮期最大血流速度 (PSV) による肝低灌流とせん断波エラストグラフィ (SWE) による肝硬化の判定により、HF患者を4群に分類した。Fetuin-Aレベルは、肝低灌流を有するHF患者では、そうでない患者と比較して有意に低下していたが、肝硬度上昇の有無による差はなかった。相関分析により、Fetuin-Aレベルは腹腔動脈のPSVと正の相関を示したが、肝臓のSWEとは相関がなかった。Kaplan-Meier解析では、Fetuin-Aレベルが低いHF患者は、心臓死や心不全増悪を含む有害な転帰の増加と有意に関連していることが明らかになった。
肝臓由来のヘパトカインであるFetuin-Aは、心臓と肝臓の相互作用に関わる新しいターゲットであると同時に、HF患者の予後を予測する有用なバイオマーカーである可能性が示唆された。
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