
- 大原 妃美佳 (おおはら・ひみか)
- 医学部 循環器内科学講座 大学院生
- 研究グループ
- 大原 妃美佳、義久 精臣、菅原 由紀子、一條 靖洋、寶槻 優、渡邊 孝一郎、佐藤 悠、三阪 智史、金城 貴士、及川 雅啓、小林 淳、竹石 恭知
概要
論文掲載雑誌:「Frontiers in Cardiovascular Medicine」(令和4年3月7日オンライン)
心不全患者において臓器うっ血は重要な病態であり、腎内静脈血流(intrarenal venous flow: IRVF)分類が予後と関連します。近年、IRVFを定量化したrenal venous stasis index(RVSI)が提唱され、肺高血圧患者において、RVSIの上昇は右心負荷を反映し予後不良と報告されました。一方、心不全患者におけるRVSIの臨床的意義は検討されていません。
本研究では、心不全患者連続388名に腎血管エコー検査を施行してRVSI[ = (cardiac cycle time - venous flow time)/cardiac cycle time)]を測定し、Control群(RVSI = 0, N = 260)、Low RVSI群(0 < RVSI ≤ 0.21, N = 63)とHigh RVSI群(0.21 < RVSI, N = 65)の3群に分類しました。各群における心機能および右心カテーテル検査所見、心臓死や心不全増悪といった心イベント発生率との関連について検討を行いました。
RVSIの上昇は右房圧(P < 0.001)、右室右房間圧較差(P = 0.003)、下大静脈径の上増大(P < 0.001)や三尖弁輪収縮期移動距離の低下(P = 0.008)などの右心負荷指標と有意に関連していました。一方、心係数(P = 0.200)や左室駆出率(P = 0.201)、左室流出路血流の時間速度積分値の低下(P = 0.219)など低灌流指標とは関連を認めませんでした。以上より、RVSIは右心負荷を反映していると考えられました。Kaplan-Meier分析では、RVSIが高値であるほど心イベント発生率が有意に上昇しました(log-rank,P = 0.001)。多変量Cox比例ハザード分析では、High RVSIは心イベント発生に関する独立した予後規定因子でした(ハザード比1.908;95%信頼区間 1.046-3.479、P = 0.035)。
心不全患者において、RVSIは右心負荷を反映し、予後不良の指標となることが示唆されました。
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