
- 丸山 裕也 (まるやま・ゆうや)
- 消化管外科学講座 大学院生
- 齋藤 元伸(さいとう・もとのぶ)
- 消化管外科学講座 講師
- 研究グループ
- ・福島県立医科大学医学部 消化管外科学講座
丸山 裕也(筆頭著者)、齋藤 元伸(責任著者)、中嶋 正太郎、 鈴木 博也、叶多 諒、岡山 洋和、花山 寛之、
坂本 渉、 佐瀬 善一郎、門馬 智之、三村 耕作、河野 浩二
・福島県立医科大学医学部 癌集学的治療地域支援講座
中嶋 正太郎
・福島県立医科大学医学部 輸血・移植免疫学講座
三村 耕作
・秋田大学大学院医学系研究科 器官病態学講座
後藤 明輝
概要
論文掲載雑誌:「Gastric cancer」(2025年2月13日)
進行・再発胃がんに対する治療成績は免疫療法やがんゲノム医療の進歩に伴って改善がみられるものの、さらなる向上が求められています。本研究では、胃がん治療においても近年注目されている免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を増強させうるメカニズムの解明を試みました。
抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブは、さまざまなチロシンキナーゼ(細胞の悪性化に関与する物質)を阻害するレンバチニブと併用することにより、その治療効果が増強されることが肝臓がん等で報告されています。胃がんにおけるこの作用増強効果の検討のため、はじめにレンバチニブが阻害しうるチロシンキナーゼとその受容体の発現を公開データベースを用いて解析したところ、胃がんでは線維芽細胞増殖因子(FGF19)とその受容体(FGFR4)が高発現していることがわかりました。胃がん切除検体での免疫染色の結果、FGF19とFGFR4が高発現している例は腫瘍のPD-L1発現が高く、FGF19-FGFR4シグナル伝達経路の活性化は免疫チェックポイント阻害薬が効きにくくなる腫瘍周囲の環境形成に関与していることがわかりました。また、胃がん細胞株を用いた実験では、FGF19-FGFR4経路の活性化はPD-L1発現の誘導をもたらすが、レンバチニブによってそのPD-L1発現は抑制されることがわかりました。一方で、肝臓がんで認められたレンバチニブによる制御性T細胞上のFGFR4阻害は認められませんでした。
本研究の結果から、胃がんにおいてレンバチニブ併用ペムブロリズマブ療法はFGF19-FGFR4経路の抑制を介してその作用増強効果をもたらす可能性があることが示されました。(丸山 裕也)
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 医学部 消化管外科学講座
電話:(大学代表024-547-1111(代))
FAX:(024-547-1980)
講座ホームページ:http://www.gi-t-surg.com