
- 栗田 宜明 (くりた・のりあき)
- 大学院医学研究科臨床疫学分野 特任教授
- 富永 亮司(とみなが・りょうじ)
- 大学院医学研究科臨床疫学分野 博士研究員
- 研究グループ
- 富永亮司(福島県立医科大学大学院医学研究科臨床疫学分野・医療法人財団 岩井医療財団 岩井整形外科病院)
池之上辰義(滋賀大学データサイエンス・AI イノベーション研究推進センター)
石井亮丞(横浜市立大学大学院データサイエンス専攻)
新畑覚也(福島県立医科大学大学院医学研究科臨床疫学分野)
會田哲朗(福島県立医科大学大学院医学研究科臨床疫学分野・福島県立医科大学総合内科・総合診療学講座)
奥田忠久(京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻)
清水さやか(京都大学大学院医学研究科地域医療システム学講座)
田栗正隆(東京医科大学大学院医学研究科医療データサイエンス分野)
栗田宜明(福島県立医科大学大学院医学研究科臨床疫学分野)
概要
論文掲載雑誌:「Journal of Bone and Mineral Research」(2025年1月17日)
本研究では、日本の医療レセプトデータを用いて、骨粗鬆症または骨粗鬆症性骨折の診断を受けた40歳以上の患者約6万人を対象に、ロモソズマブとビスフォスフォネートの心血管疾患リスクを比較しました。
ロモソズマブは、骨密度を改善する優れた効果がある新しい骨粗鬆症治療薬ですが、その使用が心血管疾患のリスクを増加させる可能性が指摘されてきました。本研究では、治療開始時点での新規患者に限定したコホート研究デザインを採用し、医療機関ごとのロモソズマブ処方率を操作変数として利用することで、治療選択における偏りを調整しました。
解析の結果、ロモソズマブを使用した患者の1年間の心血管疾患発生率は12.3/100人年であり、ビスフォスフォネートを使用した患者では11.4/100人年でした。非調整の発生率比は1.08(95%信頼区間: 1.00–1.18)でした。また、操作変数法を用いた解析では、ロモソズマブ使用者のハザード比は1.30(95%信頼区間: 0.88–1.90)と推定され、ビスフォスフォネートと比較して心血管疾患リスクが大幅に増加する明確な証拠は認められませんでした。
これらの結果は、ロモソズマブが心血管疾患リスクを大きく増加させる可能性が低いことを示しており、安全性に関する重要なエビデンスを提供します。一方で、長期的なリスク評価のため、さらなる大規模研究が求められています。(栗田 宜明)
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 大学院医学研究科 臨床疫学分野
電話:大学代表024-547-1111(代)
FAX:024-547-1468
分野ホームページ:https://noriaki-kurita.jp/