福島県立医科大学 研究成果情報

イギリス誌「BMJ Open」掲載(2024年11月20日オンライン)(2025-02-12)

Features of causes of indirect certified disaster-related death in areas affected by the Fukushima Daiichi nuclear power plant accident: an observational study

福島第一原子力発電所事故の影響を受けた地域における間接的災害関連死の原因の分析:観察研究

内 悠奈 (うち・ゆうな)
放射線健康管理学講座 MD-PhDコース生
        
研究グループ
内悠奈、澤野豊明、川島萌、野中沙織、吉村弘記、北澤賢明、榊原守、須藤眞樹子、柳内和子、大槻真子、堀有伸、尾崎章彦、山本知佳、趙天辰、及川友好、丹羽真一、坪倉正治

概要

論文掲載雑誌:「BMJ Open」(2024年11月20日)


2011年3月11日に発生した東日本大震災及びそれに伴う福島第一原子力発電所事故は、主に間接的な健康影響をもたらしました。災害時の間接的な健康影響は時として死につながります。日本では、自然災害による負傷の悪化又は避難生活等における身体的負担による疾病による死亡のうち、災害弔慰金の支給等に関する法律(昭和48年法律第82号)に基づき災害が原因で死亡したものと認められたものを災害関連死と定義しています。現時点で、放射線・原子力災害の影響を強く受けた地域における災害関連死に関する研究は限られています。本研究の目的は、福島第一原子力発電所事故後の間接的な健康影響による災害関連死の詳細を調査し、将来同様の状況が発生した際の参考とすることです。

本研究では、福島第一原子力発電所に近接する福島県南相馬市において、南相馬市災害弔慰金等支給審査委員会により災害関連死と認定された520名を調査しました。死因を年齢層および災害後の期間ごとに分析し、国際疾病分類第10版(ICD-10)コードに基づいて分類しました。

最も多い死因は循環器系疾患(27.7%)であり、次いで呼吸器系疾患(25.0%)および悪性腫瘍(15.4%)でした。循環器および呼吸器系疾患は高齢者において多く、避難による環境変化により間接的な健康影響を受けやすいことが示唆されました。悪性腫瘍(がん)は全体で3番目に多く、50歳代の死因としては最多でした。避難ががん診断や治療に影響を与える可能性が示唆されました。40歳代以下の若年層における主な死因は自殺であり、災害後の長期間にわたって発生し続けており、環境変化が心理的に影響していることを示しています。

将来の災害関連死を防ぐためには、災害発生後の期間や年齢層に応じた適切な介入方法を検討することが重要です。特に、避難所の環境の改善と避難者のための医療体制の確立、避難中のがん検診と治療のためのシステムの構築、長期的な自殺予防対策の拡充が重要と考えられます。本研究の結果は2024年11月20日にBMJ Open誌に原著論文として掲載されました。

(内 悠奈)


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