福島県立医科大学 研究成果情報

英国科学誌「BMC Medicine」掲載(令和6年6月11日)(2024-07-24)

Utility of shaking chills as a diagnostic sign for bacteremia in adults: a systematic review and meta-analysis

成人における菌血症の診断的兆候としての悪寒戦慄の有用性:システマティックレビュー・メタアナリシス

會田 哲朗 (あいた・てつろう)
総合内科・総合診療学講座 助教
        
研究グループ
會田哲朗(*責任著者) 1,2, 中川紘明1, 高橋世1, 3, 長沼透1, 3, 阿南圭祐4,5, 阪野正大4,6, 濱口杉大1
1. 福島県立医科大学総合内科
2. 福島県立医科大学大学院医学研究科臨床疫学分野
3. 福島県立医科大学ふたば救急総合医療支援センター
4. Scientific Research WorkS Peer Support Group
5. 済生会熊本病院
6. 精治寮病院

概要

論文掲載雑誌:「BMC Medicine」(June 11, 2024)


菌血症は日常診療で比較的よく出会う致死的疾患であり、いまだに高い致死率を認めています。正確な菌血症の診断は抗菌薬選択や抗菌薬の治療期間にも関わります。したがって、菌血症の正確な診断・予測は臨床的に極めて重要です。

 通常、菌血症の診断は血液培養を採取し、その結果をもって診断します。しかし、血液培養の結果は採取から数日後に出るため、臨床医は血液培養を採取した時点で抗菌薬を投与するかどうかの判断を求められます。以上から、初期の診察の段階で菌血症を予測できる指標が求められています。

 「悪寒戦慄」は患者の主観的症状だけでなく、全身が震えているため、本人以外にも家族や医療従事者でも認識することができ、たとえ患者に認知機能の問題があったとしても認識することができるため「悪寒・寒気」に比較しより客観的な指標といえます。過去の研究では「悪寒戦慄」の病歴で菌血症を予測することができるという報告を認めますが、一方で子供におけるシステマティックレビューでは相反する結果でした。したがって、「悪寒戦慄」の臨床的意義を明らかにするために、私たちは成人患者の菌血症に対する「悪寒戦慄」の診断精度研究の結果を統合したシステマティックレビュー・メタアナリシスを行いました。

 本研究では7514の論文レコードをレビューし、計14651人が含まれる19本の論文を抽出し、レビュー・解析しました。その結果、「悪寒戦慄」の診断精度は、感度 37% (95%信頼区間 29%–45%)、特異度 87% (95%信頼区間 83%–90%)と推定されました。また、感度解析として行った「悪寒」の診断精度は、感度43% (95%信頼区間 35%–52%)、特異度80% (95%信頼区間 75%–84%)という結果でした。以上の結果から、感染症診療において患者に「悪寒戦慄」を認めた場合には菌血症を予測しうることが明らかになりました。したがって、積極的に「悪寒戦慄」の病歴を聴取し、認めた場合には血液培養を適切に採取することが重要であり、また抗菌薬を早期に投与することも検討する必要があります。(會田 哲朗)


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