
- 山國 遼 (やまくに・りょう)
- 放射線医学講座 病院助手
- 伊藤 浩(いとう・ひろし)
- 放射線医学講座 教授
- 研究グループ
- 山國 遼 (放射線医学講座)、村上 丈伸 (鳥取大学 医学部 脳神経医科学講座)、右近 直之 (先端臨床研究センター)、各務 竹康 (衛生学・予防医学講座)、戸田 亘 (神経精神医学講座)、服部香寿美 (脳神経内科学講座)、関野 啓史 (放射線医学講座)、石井 士朗 (放射線医学講座)、福島 賢慈 (放射線医学講座)、松田 博史 (生体機能イメージング講座)、宇川 義一 (ヒト神経生理学講座)、若杉 憲孝 (国立精神・神経医療研究センター 脳病態統合イメージングセンター)、阿部 十也 (国立精神・神経医療研究センター 脳病態統合イメージングセンター)、伊藤 浩 (放射線医学講座)
概要
論文掲載雑誌:「Annals of Nuclear Medicine」(June 20, 2024)
近年、疾患修飾薬の登場とともに、正確なAlzheimer病(AD)の診断が重要となっています。脳へのアミロイド沈着がAD診断の要であり、アミロイドPETはその主要な役割を果たしています。アミロイドPETは視覚所見による陰性・陽性判断が臨床では主に用いられますが、各種の定量評価も提唱され、近年ではセンチロイドスケール(CL)が主たる評価方法となっています。
PET画像からCLを測定する場合、患者さん毎の脳形状の違いを均一化し、特定の共通空間(MNI空間)に変形する標準脳化(Normalization)という画像処理が必要になります。正確な標準脳化のためにはPET画像に加えて構造化MRI(Structural MRI)という精細なMRI画像が必要になります。このMRI画像はPET/MRI装置であれば、PET検査時に同時に撮像することが可能です。しかし、広く普及しているPET/CT装置の場合、別の検査からMRI画像を引用する必要があります。PET/MRI装置で収集されたMRIはPETと同時に収集されており、その空間は一致しています。しかし、別検査のMRIを用いる場合、空間の一致の精度は同時に収集する場合と比べて劣ることが想定されます。そこで、本研究では、当院で実施されたアミロイドPET連続49例に対して、①PET/MRI装置を用いて同時に収集したMRI画像を組み合わせる方法 (PET/MRI法)と②PET画像と別検査で撮像したMRI画像を組み合わせる方法(PET+MRI法)の二手法でCLを算出し、二つのCLの相関や差について検討しました。
検討の結果、2手法で算出されたCLはいずれも強い相関を示しました。11C-PiBで検査が実施された群 (y = 1.00x - 0.11, R2 = 0.999)、18F-FMMで検査が実施された群(y = 0.97x - 0.12, 0.997)、別検査のMRIの撮像パラメータがPET/MRI法と完全に一致している群(同一パラメータ群) (y = 1.00x + 0.33, 0.999)、撮像パラメータが異なる群(別パラメータ群)(y = 0.98x - 0.43, 0.997)、研究全体 (y = 1.00x - 0.24, 0.999)。ウィルコクソンの符号付き順位検定の結果、同一パラメータ群 (p=0.04)と別パラメータ群 (p=0.02)ではPET/MRI法とPET+MRI法でCLに有意差が認められましたが、その他では有意差は認められませんでした。また、Bland-Altman解析では、11C-PiB群 (-0.05)、18F-FMM群 (0.67)、同一パラメータ群 (-0.30)、別パラメータ群 (0.78)、研究全体 (0.21)において、PET/MRI法とPET+MRI法の間にごく軽微なCLの差が確認されました。
算出されたCLは2手法でほぼ完全に一致しており、互換性があると考えられます。よって、MRIが同時収集できるというPET/MRI装置のPET/CT装置に対する優位性は、CLの算出に影響しません。また、同一パラメータ群で有意差を認めたことから、“PET撮像から時間をあけて構造化MRIを撮像するとCLに差が生じる”可能性があることが示されます。また、別パラメータ群でも有意差があったことから、“構造化MRIの撮像パラメータの違いによりCLに差が生じる”可能性があることが示されました。しかし、いずれの場合もCLに生じる差は小さく、CLを臨床に使用する場合に大きな影響は無いと考えられました。(山國 遼)
連絡先
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