- 林 史和 (はやし・ふみかず)
- 放射線医学県民健康管理センター疫学室 講師
- 研究グループ
- Hayashi F,Abe K,Sato M,Ohira T,Sato S,Takahashi A,Sakai A, Shimabukuro M,Maeda M,Yabe H,Ohto H,Yasumura S
概要
論文掲載雑誌:「International Journal of Disaster Risk Reduction」(April 26, 2024)
目的:福島県「県民健康調査」(FHMS)において、帰還や避難継続といったその後の避難状況と肝機能障害の傾向との関連は依然として不明です。そこで本研究では、2018年度までのFHMSデータを用いて、この関連を評価しました。
調査方法:本研究の参加者は、2011年度に健康診査を受診し、かつ、こころの健康度・生活習慣に関する調査の問診票に回答した参加者のうち、2018年度まで追跡を行った34,435人(男性14,063人、女性20,372人)です。グループベース軌跡モデリングにより、参加者の肝機能障害の推移を軌跡グループ別に分類し、2012年度時点の各軌跡グループの調査項目の差異を検討しました。さらに、避難区域等を含む13市町村を2018年度時点の避難指示解除状況に応じて、一部避難地域、帰還可能地域、帰還困難地域に分け、ロジスティック回帰モデリングにより震災後の長期的な避難状況と肝機能障害の軌跡との関連を検討しました。
結果:参加者は、グループベース軌跡モデリングにより、それぞれグループ1(継続的に低い有病率;62.2%)、グループ2(2011年度の高有病率から改善;10.8%)、グループ3(2011年度のグループ1の有病率と同様であるが、その後増加;11.2%)、グループ4(継続的に高い有病率;15.8%)に分類されました。多変量ロジスティック回帰モデリングにより、帰還困難地域および帰還可能地域は、一部避難地域と比較して、グループ2、グループ3、グループ4に属するリスクが高いことが明らかになりました。
結論:今回の結果から、避難が長期化した地域では、肝機能障害が持続しやすいことが示唆されました。(林 史和)
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センター 疫学室
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