福島県立医科大学 研究成果情報

ドイツ誌「Life Science Alliance」掲載(令和5年10月31日オンライン)(2023-11-29)

Cell cycle-dependent gene networks for cell proliferation activated by nuclear CK2α complexes.

細胞核内CK2複合体が細胞周期特異的な遺伝子発現ネットワークを活性化する

本間 美和子 (ほんま・みわこ)
生体物質研究部門 准教授
        
研究グループ
本間美和子、八巻淳子、山元想、本間好:福島県立医科大学
中戸隆一郎、横田直子:東京大学定量生命科学研究所
新井田厚司:東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター
坂東優篤、藤木克則:東京大学定量生命科学研究所
柴田猛:株式会社 エービー・サイエックス
髙木基樹:福島県立医科大学 医療・産業トランスレーショナルリサーチセンター
尾山大明、秦裕子:東京大学医科学研究所 疾患プロテオミクスラボラトリー
白髭克彦:東京大学定量生命科学研究所、カロリンスカ研究所

概要

論文掲載雑誌:「Life Science Alliance」掲載(令和5年10月31日オンライン)


CK2(慣用名Casein Kinase 2)は、セリン・スレオニンキナーゼ(タンパクリン酸化酵素)の一つです。 CK2は全ての真核生物において主に細胞質に存在することが知られており、酵母やマウスの遺伝子改変実験からCK2は生存と増殖に必須であること、ヒト癌試料を用いた解析から種々癌組織においてCK2 mRNAもしくはタンパクレベルが増大することが報告されてきました。一方で、CK2活性制御の仕組みや細胞質以外のさまざまな細胞内局在の詳細については不明な点が多く残されハウスキーピング酵素のように考えられてきました。私たちはこれまでにCK2タンパク質の細胞核内への蓄積が乳癌再発等のがん悪性化と関連することを見出して来ましたが、その生物学的意義は不明でした。本研究ではCK2タンパク質が細胞周期進行に伴い核内へ移行し、細胞周期特異的な遺伝子ネットワークを活性化することを、プロテオーム解析、エピゲノム解析、分子生物学的実験、さまざまなアプローチを併用して明らかにしました。本研究は今後のCK2を標的としたがんの治療戦略の基盤となることが期待されます。本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金、日本医療研究開発機構(AMED)橋渡し研究戦略的推進プログラム事業ならびに医療研究開発推進事業費補助金、等の公的研究費支援(本間美和子代表)により実施されました。

研究のポイント

  1. 正常ヒト由来線維芽細胞の細胞周期を同調的に移行させる実験系を用いG0期からG1期を経由してDNA複製を行うS期までの間に、一部のCK2がリン酸化され細胞質から核内へ移行し活性化されることを見出しました。リン酸化プロテオミクス技術によりCK2分子内リン酸化部位複数箇所を同定し特にCK2アミノ酸配列7番目のセリン残基リン酸化が、CK2核移行と活性化へ関与することが分かりました。
  2. 核におけるCK2複合体をプロテオミクス技術により同定したところ、CK2は細胞周期特異的に転写因子などの構成要素と連携することが判明し、核における遺伝子発現へ関与することが示唆されました。
  3. 抗CK2抗体によるクロマチン免疫沈降実験(CK2-ChIP-Seq)を行い、CK2が転写調節に直接関与すると考えられるゲノム領域を明らかにしました。その結果、転写がアクティブな状態にあるゲノム領域の転写開始点(TSS)近傍へCK2がリクルートされることを見出しました。

(本間 美和子)

研究内容の詳細はこちらよりご覧になれます

 


関連サイト

  • 論文
    https://doi.org/10.26508/lsa.202302077

連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部 生体物質研究部門

TEL:024-547-1660

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