
- 山國 遼 (やまくに・りょう)
- 放射線医学講座 病院助手
- 研究グループ
- 山國 遼(放射線医学講座)、清野 真也(放射線部)、石井 士朗(放射線医学講座)、石川 寛延(放射線部)、樵 勝幸(放射線部)、安藤 達也(放射線医学講座)、各務 竹康(衛生学・予防医学講座)、福島 賢慈(放射線医学講座)、大谷 晃司(整形外科学講座)、伊藤 浩(放射線医学講座)
概要
論文掲載雑誌「Acta Neurochirurgica (The European Journal of Neurosurgery)」(令和5年6月21日)
Valsalva負荷とは大きく息を吸ってお腹に力を入れる呼吸の方法で、人が重いものを持つ時に自然と行っている呼吸動作です。我々は腰部脊柱管狭窄が認められる患者の中に、Valsalva負荷下のCine MRIにおいて馬尾に動きが見られることを発見し症例報告を行いました(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35979579/)。さらに狭窄の程度と馬尾の運動の頻度に関連性があることもRetrospectiveに収集されたデータから見出し、論文報告を行っています(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36609720/)。しかし、この動きの駆動力についての詳細は不明です。
Valsalva負荷により様々な静脈が拡張することが知られています。例えば内頚静脈や下大静脈などが拡張します。腰椎硬膜周囲にも静脈叢が発達しており、Valsalva負荷により静脈が拡張し硬膜下腔が縮小させ、脳脊髄液の動きを作ることが、馬尾の運動の駆動力と考えました。これを実証するためは健常者でValsalva負荷時にどの様に硬膜下腔が変化するのかを確認する必要があります。
本研究では健康な39歳の成人男性ボランティアを被検者として実験的撮影を行いました。FIESTA Cine MRIを60秒間撮像し、60秒間に3回のValsalva負荷を自動音声で被検者に対して指示しました。撮像断面はSagittal像およびTh12からS1の椎間板および椎体レベルのAxial像としました。また、負荷時と安静時の2Dミエログラフィーも撮像しました。MRI撮像は日を分けて3回行い、断面ごとに9回のValsalva負荷と安静時のセットデータが得られました。
Cine MRIおよびミエログラフィーでバルサルバ負荷中の硬膜下腔の縮小が観察されました。断面の測定により、負荷時 (mean: 129.3 mm2; standard deviation [SD]: 27.4 mm2) は、安静時 (mean: 169.8; SD: 24.8; Wilcoxon signed-rank test, P < 0.001) よりも有意に硬膜下腔が縮小している事が確認されました。また、椎間板レベルの縮小の程度 (mean: 26.7%; SD: 9.4%) は椎間板レベル (mean: 21.4%; SD: 9.5%; Wilcoxon rank sum test, P = 0.0014) よりも明らかに大きく観察されました。さらに、その硬膜下腔の縮小は、椎体レベルでは硬膜下腔の腹側が、椎間板レベルにおいては両側の椎間孔側で主に観察されました。
結論として、Valsalva負荷により腰椎硬膜下腔は縮小します。この現象は、脳脊髄液の流れ、馬尾の運動、神経圧迫に関連し、腰痛と関連している可能性があります。
(山國 遼)
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 医学部 放射線医学講座
TEL:大学代表024-547-1111(代表)/FAX:024-549-3789
講座ホームページ:https://www.fmu.ac.jp/cms/rad/index.html
メールアドレス:rad@fmu.ac.jp(スパムメール防止のため、全角やスペースを含む表記をしています)