福島県立医科大学 研究成果情報

米国雑誌「Frontiers in Immunology」掲載(令和5年10月2日オンライン)(2023-12-07)

Safety of JAK and IL-6 inhibitors in patients with rheumatoid arthritis: a multicenter cohort study

関節リウマチ患者におけるJAKおよびIL-6阻害薬の安全性の検討:多施設共同研究

吉田 周平 (よしだ・しゅうへい)
リウマチ膠原病内科学講座 助手
        
研究グループ
○福島県立医科大学医学部リウマチ膠原病内科学講座
吉田 周平、住近 祐哉、齋藤 賢司、松本 聖生、天目 純平
藤田 雄也、松岡 直紀、浅野 智之、佐藤 秀三、右田 清志

○福島赤十字病院
宮田 昌之

○太田西ノ内病院
鈴木 英二、菅野 孝

概要

論文掲載雑誌:「Frontiers in Immunology」(令和5年10月2日オンライン)


 関節リウマチ(RA)は膠原病疾患の中で最も多い疾患であり、関節軟骨の著しい炎症と骨損傷を引き起こし、様々な臓器に影響を及ぼします。RA治療における新薬である、ヤヌスキナーゼ阻害薬(JAKi)の登場によりRAの寛解の達成が可能となりました。 現在我が国ではトファシチニブ、バリシチニブ、ウパダシチニブ、フィルゴチニブ、ペフィシチニブの5剤のJAKiが使用されています。しかし近年、JAKi治療による悪性腫瘍や主要心血管イベント(MACE)の発生の増加が懸念されています。ORAL Surveillance試験では、既存の生物学的製剤である腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬よりも、トファシチニブに関連する悪性腫瘍およびMACEの発生率が高い可能性が示されました。しかし、非TNF阻害薬や他のJAKiの安全性を比較した研究はほとんどありませんでした。したがって我々は実臨床における非TNF阻害薬であるインターロイキン6阻害薬(IL-6i)とJAKiの重大な有害事象を比較しました。
 当科および協力施設のRA患者のうちIL-6iを使用した273名、JAKiを使用した154名を対象としました。
 結果として傾向スコアマッチングで患者背景を調整後の両群の悪性腫瘍およびMACEの発生率に有意な差はありませんでした。また、COX回帰分析で65歳以上の高齢およびJAKi使用が悪性腫瘍の独立した危険因子であり、高齢、高血圧およびJAKi使用がMACEの危険因子と考えられました。全悪性腫瘍の標準化発生率比は、一般集団と比較してJAKi治療群で有意に高いことが分かりました(2.10/100人年、95%信頼区間:1.23-2.97)。
 当科における検討ではJAKiとIL-6iの使用による悪性腫瘍とMACEの発生率は同等でしたが、一般集団との比較ではJAKiを使用したRA患者は悪性腫瘍発生率が高いようであり、JAKiと非TNF阻害薬を比較するさらなる安全性試験が必要です。

(吉田 周平)


連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部リウマチ膠原病内科学講座

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