- 齋藤 宏章 (さいとう・ひろあき)
- 医学部 放射線健康管理学講座 大学院生(博士課程)
- 研究グループ
- 齋藤宏章、坪倉正治(福島県立医科大学 放射線健康管理学講座)
概要
論文掲載雑誌「Scientific Reports」(令和3年12月13日)
大腸がん検診は、大腸がんの予防、死亡率の軽減などの指標において、確立されたがん検診方法であり、世界中で行われています。また、その有効性は高い受診率を維持できるかどうかにかかっていると言われています。このため、参加率を高く保つための方策や、参加率の低下を妨げる因子の特定は有効な大腸がん検診を行う上で重要な課題となります。大きな災害や、新型コロナウイルスのようなパンデミック下では日常の医療に支障が出ることが知られていますが、がん検診のような予防的な取り組みに対する影響に関しては十分な評価はされてきませんでした。
本研究では、2011年の東日本大震災と、それに続く福島第一原発事故で住民が避難を余儀なくされた南相馬市を対象に、震災前後10年間の大腸がん市民検診の受診率の推移を分析しました。南相馬市では市民大腸がん検診として、毎年、便潜血検査を実施しています。2009年から2018年の年度毎の大腸がん検診受診率を算出し、検診受診に関連する要因を分析しました。40歳から74歳の方を対象に解析を行いました。
震災前は2009年に4069人(12.3%),2010年に3839人(11.7%)が大腸がん検診に参加していましたが,震災が発生した2011年には1090人(3.4%)と大幅に減少していました。参加率は2012年も低下した状態が継続し、2013年に震災以前とほぼ同等の水準まで回復していました。2011年以降は、65歳未満、独居、避難の状態にあることが検診を受けないことに統計学的に有意に関連し、この傾向は2018年でも継続していました。
結論として、大腸がん検診受診率は、東日本大震災時に大きく低下していましたが、その後3年間で回復していました。大腸がん検診を受診することを妨げる要因のさらなる分析が必要です。また、この研究で示された震災後の大腸がん検診受診率の低下がもたらす、長期的な影響に関する研究が求められています。
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