
- 松本 拓朗(まつもと・たくろう)
- 福島県立医科大学 医学部 消化管外科学講座 助教

- 岡山 洋和(おかやま・ひろかず)
- 福島県立医科大学 医学部 消化管外科学講座 講師

- 河野 浩二(こうの・こうじ)
- 福島県立医科大学 医学部 消化管外科学講座 主任教授
- 研究グループ
- Takuro Matsumoto、Hirokazu Okayama、Shotaro Nakajima、Katsuharu Saito、Misato Ito、Akinao Kaneta、 Yasuyuki Kanke、Hisashi Onozawa、Suguru Hayase、Shotaro Fujita、Wataru Sakamoto、Motonobu Saito、Zenichiro Seze 、Tomoyuki Momma、Kosaku Mimura、Koji Kono
概要
論文掲載雑誌「British Journal of Cancer」(令和3年12月10日)
大腸癌はマイクロサテライト不安定(MSI)なものと、マイクロサテライト安定(MSS)なものに大別することができる。多くの大腸癌はMSSに分類され、発癌・進展の過程で癌関連遺伝子変異の蓄積とともに染色体不安定性(CIN)を示す。本研究では、大腸腺腫・大腸癌組織および大腸癌細胞株の大規模なマルチオミクス解析と免疫組織学的染色(総計3700サンプル超)、さらに大腸癌培養細胞株を用いた機能的検討を行った。大腸腺腫からMSS/CIN大腸癌へと進展する経路で負の制御を受ける遺伝子群として、SH2D4Aを含む11遺伝子を抽出した。これら遺伝子群は染色体8番短腕(8p)にコードされており、MSS/CIN大腸癌において、主として染色体8p喪失によって同遺伝子群の発現低下が生じることがわかった。さらに、染色体8p欠失、8pにコードされる遺伝子群の発現低下、SH2D4A遺伝子発現低下、あるいはSH2D4Aタンパク発現消失といった特徴を示す大腸癌は、臨床的には予後が不良であり、腫瘍内T細胞浸潤が高度に抑制されていることを見出した。このような表現型は単一遺伝子の機能喪失では説明できないが、SH2D4Aを含む染色体8p上の多数の遺伝子機能喪失が、協調的にMSS/CIN大腸癌の進展および免疫抑制的な腫瘍微小環境の形成を促進することが示唆された。本研究結果が、今後の大腸癌診療の個別化の可能性に加え、MSS/CIN大腸癌における腫瘍進展メカニズムの解明に寄与することが期待される。
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 医学部 消化管外科学講座
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FAX:024-547-1980
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