
- 西澤 佳代(にしざわ・かよ)
- 医学部 生体機能研究部門 助教

- 小林 和人(こばやし・かずと)
- 医学部 生体機能研究部門 教授
- 研究グループ
- 岡田佳奈、西澤佳代、小林とも子、坂田省吾、橋本浩一、 小林和人
Kana Okada, Kayo Nishizawa, Tomoko Kobayashi, Shogo Sakata, Kouichi Hashimoto, Kazuto Kobayashi
概要
論文掲載雑誌「Scientific Reports」(令和3年6月30日)
進行する記憶障害を示すことが知られているアルツハイマ病では、前脳基底部コリン作動性神経細胞の減少が起こります。記憶障害とコリン作動性神経細胞の減少の間に関連があることについてはよく研究されており、前脳基底部コリン作動性神経細胞のうち、主に海馬に投射がある内側中隔/垂直対角帯と大脳皮質に投射しているマイネルト基底核はそれぞれ異なる種類の記憶に関与していることが報告されています。
一方、アルツハイマ病は、記憶障害ばかりではなく、社会性の遂行を妨げる”認知症に伴う行動・心理症状 (BPSD)”をも伴うことが分かっています。こうした症状は療養を著しく困難にするものですが、アルツハイマ病における社会性の障害の神経科学的仕組みはいまのところ不明です。そこで本研究では、同病における前脳基底部コリン作動性神経細胞の喪失が社会性の障害に関与しているのか、関与しているとすればどの部分の前脳基底部コリン作動性神経細胞がどのような社会性の側面に関与しているのかについて、マウスを用いて調べました。
その結果、前脳基底部のうち、内側中隔/垂直対角帯のコリン作動性神経細胞の損傷が同族他個体との社会的交流を減少させ、マイネルト基底核のコリン作動性神経細胞の損傷が他個体についての再認記憶を障害することが分かりました。また、それぞれの社会性障害は、アルツハイマ病治療薬であるドネペジルおよびリバスチグミンの単回投与によって回復することも分かりました。
これは、動物の持つ社会性の神経基盤を明らかにする上で、重要な手掛りとなるデータです。
連絡先
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